ゲゲゲの鬼太郎第6期・第44話『なりすましのっぺらぼう』 感想
今回の原作は「のっぺらぼう」。すでに今期アニメ化された「霊形手術」と同じく、「人魂を食べることで顔を失う」というアイデアを盛り込んだエピソードです。
この人魂ネタは水木先生のお気に入りだったようで、複数の作品でそのバリエーションを見ることができます。貸本時代の「人魂を飼う男」と、そのリライト作品である「霊形手術」、そして鬼太郎シリーズにおける「のっぺらぼう」が代表格ですが、他にも「悪魔くん千年王国」や、未発表原稿である「人魂の効能」など、いろいろとあるので、探してみると面白いでしょうね。
……と、原作の話をしておいて何ですが、今回のアニメ版は、あくまで「のっぺらぼうがメインゲストとして登場するオリジナルストーリー」となっておりました。
ヒーローオタクである本来の「顔」を偽り、チャラ男キャラとしてアイドル活動をしている青年・敦。彼を唯一理解してくれるのは、SNSで知り合った「顔」の分からない相手、ゴーゴー万次郎。そんな万次郎に会いたいとメッセージを送った敦だったが、万次郎の正体は、かつて子供の頃に仲よく遊んでいた「顔」のない妖怪・のっぺらぼうだった。
のっぺらぼうは、大人になった敦が自分を怖がるであろうことを心配し、鬼太郎に替え玉を頼む。鬼太郎は万次郎という偽りの「顔」で敦と会うが、その嘘はすぐにバレてしまった。鬼太郎を尾行した敦は、本物の万次郎であるのっぺらぼうと遭遇し、怯えて逃げ出してしまう。
と、ちょうどそこへやってきたのは、敦のアイドルユニットのパートナーである悠。悠は敦を車に乗せ、ひと気のない場所へ連れていくが……。実は悠の「顔」もまた偽りのもの。その正体は、美青年に化けて人間を油断させ食らっていた凶悪な妖怪・白粉婆だった。
……とまあ、何かと「顔」づくしだった今回のエピソード。全体的には、心温まる系のお話としてまとまっておりました。
人間と仲良くなりたいのっぺらぼうが、自分の顔にラクガキみたいな目鼻口を描いてうろついているところは、だいぶホラーだった気もしますが(笑)、そののっぺらぼうに「顔を偽る必要なんてない」と諭した子供時代の敦が、大人になって、自分の偽りの顔に翻弄されるという皮肉。そしてそんな彼が、のっぺらぼうのピンチを前に、ヒーローに憧れていた頃の自分を取り戻す――。
と書くと、いい感じにまとまっているように思うのです。
ただ――正直申し上げると、今回の話、どうにもしっくりこなかったんですよね。
いや、純粋に「いい話」ではありますし、そのいい話を構成する上で、「偽りの顔」というキーワードが随所に散りばめられているという遊び心も分かるのですが……。
何だろう、そのキーワードがただ散りばめられているだけで、まったく噛み合ってない感じがするというか。
思うに、問題は一番の山場――。白粉婆に襲われた敦がのっぺらぼうに助けられて幼少時代の記憶を蘇らせ、今度はピンチに陥ったのっぺらぼうを、「ヒーロー」である自分が助けようとする、この流れ。
ここに「偽りの顔」というキーワードがまったく絡んでいないように見えたのが、最大の問題点だったのではないでしょうか。
そもそも敦は、べつにヒーローを愛する心を失っていたわけじゃない。アイドルの顔を作る必要のない舞台裏では、相変わらずヒーロー大好きっ子のままだった。それに、万次郎の正体が妖怪だと知って恐れたのは、単に子供の頃の記憶が薄れていたからというだけ。
だから、敦が幼少期の記憶を蘇らせて、かつてのヒーローごっこで培った正義感を燃やし、のっぺらぼうを助けるために白粉婆に立ち向かう――という一番熱い山場において、肝心の「偽りの顔」というキーワードが、まったく無関係になってしまっているんです。
おかげで、部分部分では面白いのに、テーマに一貫性がない。いや、「偽りの顔」というテーマ自体ははっきりしているのに、なまじはっきりしているだけに、一貫性が生まれそうで生まれていない展開にモヤモヤする。だから、どうにもしっくりこない――。
……と、おそらくこういうことなのでしょうね。僕が「いまいちだった」と感じている理屈は。
これを改善するとしたら、例えば、敦がプライベートでもチャラ男キャラに蝕まれていて、もはやそのようにしか振る舞えなくなっている中で、土壇場でのっぺらぼうのことを思い出し、ついに偽りの顔を脱ぎ捨ててヒーローになる――というような展開であれば、とても納得できたかもしれないのですが。
そんなわけで、ストーリー面ではいささか不満の残る形になってしまいました。
ただ、小ネタの方では、注目したいところがいくつか。
まず、今回の敵に白粉婆をチョイスしたこと。
白粉婆とのっぺらぼう、といえば――そう、第四期ですね。
もともと第四期では第7話で「妖怪のっぺらぼう!」という名エピソードがあって、そこでまさかの強敵として活躍したのっぺらぼう(声は現・一反木綿役の山口勝平さん)が再登場したのが、第21話「白粉婆とのっぺらぼう」。
ある村で若い娘の顔が奪われるという事件が起こり、当然疑いはのっぺらぼうに向くのですが、すでに改心していたのっぺらぼうは、鬼太郎と協力して事件を調査。真犯人だった白粉婆と対決する――というお話です。
まあ、因縁というほど深い因縁でもないのですが、今回第六期で再び両者が共演を果たしたのは、当時のファンならニヤリとできるサプライズだったと思います。
それから、人魂の天麩羅……ではなく、「魂の天麩羅」となっていましたが、前述した恒例のアレ。
すでに「霊形手術」でやっていたため、今回は完全にオミットされるかと思っていたんですが、小ネタ的にきちんと盛り込まれていましたね。
うっかり食わすな(笑)。そして、うっかり食うな(笑)。
最後に、敦とニセ万次郎(鬼太郎)が入った喫茶店の名前。
「ザ・パリティ」って……?
これはもしや、「鬼太郎夜話」に出てきた「ザ・パンティ」か(笑)!
支配人の名前が助部(すけべ)さんでお馴染みの、あの「ザ・パンティ」か!
名前はアレだけど、店自体は上品なことでお馴染みの、あのry
というわけで、エピソードより小ネタの方に目が行ってしまった今回はここまで。
あ、でものっぺらぼうは可愛かったです。
次回は、「妖怪万年竹」。しかも次回予告を見る限り、なんか面白そうな雰囲気ですね。
どんな話に仕上がっているのか、今から楽しみです。
ではまた!
この人魂ネタは水木先生のお気に入りだったようで、複数の作品でそのバリエーションを見ることができます。貸本時代の「人魂を飼う男」と、そのリライト作品である「霊形手術」、そして鬼太郎シリーズにおける「のっぺらぼう」が代表格ですが、他にも「悪魔くん千年王国」や、未発表原稿である「人魂の効能」など、いろいろとあるので、探してみると面白いでしょうね。
……と、原作の話をしておいて何ですが、今回のアニメ版は、あくまで「のっぺらぼうがメインゲストとして登場するオリジナルストーリー」となっておりました。
ヒーローオタクである本来の「顔」を偽り、チャラ男キャラとしてアイドル活動をしている青年・敦。彼を唯一理解してくれるのは、SNSで知り合った「顔」の分からない相手、ゴーゴー万次郎。そんな万次郎に会いたいとメッセージを送った敦だったが、万次郎の正体は、かつて子供の頃に仲よく遊んでいた「顔」のない妖怪・のっぺらぼうだった。
のっぺらぼうは、大人になった敦が自分を怖がるであろうことを心配し、鬼太郎に替え玉を頼む。鬼太郎は万次郎という偽りの「顔」で敦と会うが、その嘘はすぐにバレてしまった。鬼太郎を尾行した敦は、本物の万次郎であるのっぺらぼうと遭遇し、怯えて逃げ出してしまう。
と、ちょうどそこへやってきたのは、敦のアイドルユニットのパートナーである悠。悠は敦を車に乗せ、ひと気のない場所へ連れていくが……。実は悠の「顔」もまた偽りのもの。その正体は、美青年に化けて人間を油断させ食らっていた凶悪な妖怪・白粉婆だった。
……とまあ、何かと「顔」づくしだった今回のエピソード。全体的には、心温まる系のお話としてまとまっておりました。
人間と仲良くなりたいのっぺらぼうが、自分の顔にラクガキみたいな目鼻口を描いてうろついているところは、だいぶホラーだった気もしますが(笑)、そののっぺらぼうに「顔を偽る必要なんてない」と諭した子供時代の敦が、大人になって、自分の偽りの顔に翻弄されるという皮肉。そしてそんな彼が、のっぺらぼうのピンチを前に、ヒーローに憧れていた頃の自分を取り戻す――。
と書くと、いい感じにまとまっているように思うのです。
ただ――正直申し上げると、今回の話、どうにもしっくりこなかったんですよね。
いや、純粋に「いい話」ではありますし、そのいい話を構成する上で、「偽りの顔」というキーワードが随所に散りばめられているという遊び心も分かるのですが……。
何だろう、そのキーワードがただ散りばめられているだけで、まったく噛み合ってない感じがするというか。
思うに、問題は一番の山場――。白粉婆に襲われた敦がのっぺらぼうに助けられて幼少時代の記憶を蘇らせ、今度はピンチに陥ったのっぺらぼうを、「ヒーロー」である自分が助けようとする、この流れ。
ここに「偽りの顔」というキーワードがまったく絡んでいないように見えたのが、最大の問題点だったのではないでしょうか。
そもそも敦は、べつにヒーローを愛する心を失っていたわけじゃない。アイドルの顔を作る必要のない舞台裏では、相変わらずヒーロー大好きっ子のままだった。それに、万次郎の正体が妖怪だと知って恐れたのは、単に子供の頃の記憶が薄れていたからというだけ。
だから、敦が幼少期の記憶を蘇らせて、かつてのヒーローごっこで培った正義感を燃やし、のっぺらぼうを助けるために白粉婆に立ち向かう――という一番熱い山場において、肝心の「偽りの顔」というキーワードが、まったく無関係になってしまっているんです。
おかげで、部分部分では面白いのに、テーマに一貫性がない。いや、「偽りの顔」というテーマ自体ははっきりしているのに、なまじはっきりしているだけに、一貫性が生まれそうで生まれていない展開にモヤモヤする。だから、どうにもしっくりこない――。
……と、おそらくこういうことなのでしょうね。僕が「いまいちだった」と感じている理屈は。
これを改善するとしたら、例えば、敦がプライベートでもチャラ男キャラに蝕まれていて、もはやそのようにしか振る舞えなくなっている中で、土壇場でのっぺらぼうのことを思い出し、ついに偽りの顔を脱ぎ捨ててヒーローになる――というような展開であれば、とても納得できたかもしれないのですが。
そんなわけで、ストーリー面ではいささか不満の残る形になってしまいました。
ただ、小ネタの方では、注目したいところがいくつか。
まず、今回の敵に白粉婆をチョイスしたこと。
白粉婆とのっぺらぼう、といえば――そう、第四期ですね。
もともと第四期では第7話で「妖怪のっぺらぼう!」という名エピソードがあって、そこでまさかの強敵として活躍したのっぺらぼう(声は現・一反木綿役の山口勝平さん)が再登場したのが、第21話「白粉婆とのっぺらぼう」。
ある村で若い娘の顔が奪われるという事件が起こり、当然疑いはのっぺらぼうに向くのですが、すでに改心していたのっぺらぼうは、鬼太郎と協力して事件を調査。真犯人だった白粉婆と対決する――というお話です。
まあ、因縁というほど深い因縁でもないのですが、今回第六期で再び両者が共演を果たしたのは、当時のファンならニヤリとできるサプライズだったと思います。
それから、人魂の天麩羅……ではなく、「魂の天麩羅」となっていましたが、前述した恒例のアレ。
すでに「霊形手術」でやっていたため、今回は完全にオミットされるかと思っていたんですが、小ネタ的にきちんと盛り込まれていましたね。
うっかり食わすな(笑)。そして、うっかり食うな(笑)。
最後に、敦とニセ万次郎(鬼太郎)が入った喫茶店の名前。
「ザ・パリティ」って……?
これはもしや、「鬼太郎夜話」に出てきた「ザ・パンティ」か(笑)!
支配人の名前が助部(すけべ)さんでお馴染みの、あの「ザ・パンティ」か!
名前はアレだけど、店自体は上品なことでお馴染みの、あのry
というわけで、エピソードより小ネタの方に目が行ってしまった今回はここまで。
あ、でものっぺらぼうは可愛かったです。
次回は、「妖怪万年竹」。しかも次回予告を見る限り、なんか面白そうな雰囲気ですね。
どんな話に仕上がっているのか、今から楽しみです。
ではまた!