ゲゲゲの鬼太郎第6期・第16話『潮の怪!海座頭』 感想

 今回はタイアップ回。
 境港は、言わずと知れた水木先生の生まれ故郷。駅前から続く商店街は「水木しげるロード」として、観光地になっています。
 僕も過去に一度遊びにいきましたが、当時は妖怪のブロンズ像こそ並んでいるものの、観光地としてはまだ静かなものでした。あれから年月が経って、だいぶ様変わりしていると思うので、また遊びにいきたいですね。
 ちなみに作中に出てきた庄司おじさんは(甲子園出場経験も含めて)、境港にある水木しげる記念館の館長さんをモデルにしているそうです。

 で、そんな境港は、実はまなちゃんのお父さんの故郷でもあった――という驚くべき(?)事実が判明。
 つまり境港で生まれて現在は調布に暮らすという、まんま水木先生と同じ住所を辿っているわけです。
 いやはや、実際にそんな人が目の前にいたら、水木ファン的には「すげぇ!」と興奮するしかないですよ。いや、何がすごいのかと聞かれてもよく分かりませんけど、なんかすごい気がしてしまうんです。
 そうか、これが無意識な聖地崇拝か……。

 一方で境港と言えば、港町としても有名です。ていうか港町です。
 そんなこともあって、今回の原作エピソードとしてチョイスされたのは、「海座頭」。アニメ化はこれで四度目。
 第五期では船幽霊のホラー描写が際立っていたことと、一反木綿の主役回だったことが印象に残っています。
 もちろんホラーと言えば、第六期もコンセプトの一つとして相当力を入れていますが、今回の船幽霊については、第五期に比べればおとなしめでした。まあ、第五期では家まで追いかけてきましたからね。だいぶ変則的だったし、しょうがないですね。

 ちなみに実際の伝承では、船幽霊に柄杓を求められたら、底を抜けた柄杓を渡すというのがお約束です。今回鬼太郎がやっていたやつですね。
 なお、海で柄杓を求めてくる妖怪は船幽霊だけではなく、海坊主なんかも同じことをします。どちらも海に現れるメジャーな妖怪なので、言い伝えが広がるうちに、情報が混ざり合ったものと思われます。

 で――その船幽霊に引き込まれてしまった庄司おじさん。
 他の船幽霊達と一緒にまなちゃんの乗った船を襲撃しますが、ギリギリのところで正気を保ち、まなちゃんを助けてくれました。
 その時おじさんの手からまなちゃんに渡った思い出の甲子園ボールによって、「おじさんが船幽霊になってしまった」という事実が分かり、鬼太郎が呼ばれる――というスムーズな展開に繋がります。
 ……いや、ボールの役割はここで終わりだと思ったんですけどね(笑)。

 終盤、海座頭の攻撃でピンチに陥った鬼太郎を助けるため、ここでまさかの、おじさんの甲子園伝説が復活!
 大海原を切り裂くように放たれたおじさんの豪速球が、海座頭の横っ面にクリーンヒット!
 うん、よくコナン君がサッカーボールでやっているやつや。
 熱いけど笑うわ、これ(笑)。

 そのシーンより少し前ですが、境港のみんなが力を合わせて、船幽霊にされたおじさん達の魂を取り戻す展開も、こちらは純粋に熱かったです。
 船幽霊の力に負けそうになるも、そこへ鬼太郎ファミリーが合流して大逆転! 人間と妖怪が一体化することで勝利をつかむというこの流れは、やはり実際の「水木しげるロード」という観光地の存在を反映させてのものでしょう。
 今期でしばしば見られる、人間と妖怪の間にある境界線の意識も、境港という町では無と化すわけですね。
 これは決してタイアップゆえの優遇ではなく、水木先生ゆかりの境港ならでは。人間と妖怪が分け隔てなく楽しむラストのお祭りの情景も、それを大いに物語っていたと思います。

 総じて良い回でした。
 ……あ、でもサメは出なかったですね。


 今回の感想はここまで。
 さて、次回は……境港だ! ←続くんかい(笑)
 次のゲスト妖怪は蟹坊主。非原作のオリジナルストーリーですね。
 ではまた来週。

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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第15話『ずんべら霊形手術』 感想

 今回はお待ちかね、「鬼太郎シリーズ以外の水木作品」からのアニメ化エピソードです。
 旧作からのファンにはお馴染みですが、アニメ版鬼太郎では毎シーズン、必ずこの手の回が登場します。
 もともとは原作数の不足を補うための策でしたが、第二期でこれを多用したところ、結果的に怪奇や風刺といった水木色の強いエピソードが多数誕生。好評を博したことから、第三期以降も繰り返しおこなわれ、今やすっかりアニメ版鬼太郎のお楽しみの一つとなりました。
 ちなみに、過去にどのようなものをやっているかは、こちらの記事をご参照ください。

 で、今回の原作は「霊形手術」。
 ――整形手術で美貌を手に入れた月子は、許嫁のブサイク男・三吉に結婚を断念させるため、町で出会った奇妙な男・村田宗仁を自分の結婚相手として三吉に紹介する。三吉は宗仁に対抗意識を燃やすが、ある夜、その宗仁が密かに人魂を捕らえ、食べていることを知ってしまった。しかし話を聞いた月子は本気にせず、むしろ三吉を臆病者と挑発。それに乗った三吉は、月子に度胸を示すため、宗仁が調理した人魂の天麩羅を食べてしまう。
 するとそれを機に、宗仁は突然「顔が変わった」かのように美男子と化し、月子に本気でプロポーズを始める。月子もまんざらではない。一方三吉は、人魂を食べた影響で体に異変をきたし、事もあろうか顔を失ってしまった。そして月子もまた、宗仁の作った人魂入りケーキを食べ……。

 と、原作はこんな感じのお話です。
 宗仁の正体は、偶然人魂を食べたことで顔を失った人間。しかし彼はその結果をポジティブ(?)に受け止め、世の中から「顔の美醜」という不平等をなくすため、この人魂による霊形手術を広めようと画策します。
 彼の被害者である三吉と月子も、顔を失ったことでようやくその素晴らしい世界に目覚め、宗仁に共鳴。最後は三人が希望に満ちた笑い声を上げながら人魂を培養する――という妙にハッピーエンドな終幕を迎えます。
 「人ならざるものにこそ幸福がある」というのは水木作品の定番要素ですが、どちらかといえば人間の狂気を描いたものとも取れるこの作品。実は貸本時代の長編「人魂を飼う男」のリライトであり、原典となる貸本版では、明確に不気味な予兆を示す終わり方になっていました。
 ちなみに「人魂を飼う男」のタイトル絵は、今回のAパートのアイキャッチにもなっていますね。アニメ版の直接の原作である「霊形手術」ではなく、敢えてこちらを使う辺り、なかなかマニアックです(笑)。

 余談ですが、「人魂を食べて顔がなくなる」というネタは、水木先生のお気に入りと見えて、様々な作品に流用されています。
 有名どころでは鬼太郎の一エピソード、「のっぺらぼう」。それから「悪魔くん千年王国」。
 他にもいくつかあるのですが、共通して「人魂は美味しそう」という感想になります。余談終わり。

 ……で、この「霊形手術」ですが、アニメ版鬼太郎では、第二期に一度アニメ化されています。
 ここでは上の三人の特徴づけが変わり、月子は自身の美貌に満足できない欲深な女、三吉は盲目的に月子を愛する純情で愚かな男、宗仁は妖怪「ずんべら」――と、それぞれアレンジが入りました。
 ずんべらというのは、ここでは妖怪の名前になっていますが、要するに顔がないこと。原作「霊形手術」で、宗仁が自分達を指して「ずんべら」と呼ぶシーンがあることから、それを妖怪名として持ってきたものと思われます。
 もっとも実際の伝承では、「のっぺらぼう」という妖怪の異名として「ずんべら坊」というのがあり、こちらは水木先生も妖怪画に起こしています(今回のBパートアイキャッチ)。一応「霊形手術」のずんべらとは別物なんですが、なかなかややこしいですね。

 ……話が逸れました。
 第二期では、ずんべらは宗仁と違ってあくまで妖怪であり、(ねずみ男や月子にそそのかされて悪事に走りかけたものの)基本的には無害な存在として描かれています。言わばニュートラルです。
 一方三吉は、月子に好かれたいがあまり自分の顔を捨てますが、それを知った月子は、三吉に対して一切の感情も抱かず、ただ自分も「自由に付け替えられる美貌」を手に入れたいと願い、人間であることをやめようとします。
 顔を捨てるという方法こそ同じなれど、月子というただ一つのゴールを求めた三吉と、終わりのない欲望に取り憑かれた月子――。原作では最終的に同類となった二人ですが、アニメ版でははっきりと、対照的な存在として描かれました。
 そして強欲な月子には、最後に恐ろしい報いが……。
 ラストで彼女の身に起きた、あまりにも唐突な悲劇は、冷静になって考えれば、いささか無理やり感は拭えません。ただ、この第二期「霊形手術」は、一言で言えば「演出回」でもありました。全編に渡って溢れる特異な演出が、最後の唐突な展開すら力ずくで納得させてしまう――。そんな怪作だったと思います。
 まあ、今の視点で見ると、「三吉の言動って相当キモいよね~」みたいな身も蓋もない感想も抱いてしまうわけですが……。

 ともあれ、これらを踏まえての、今回の第六期「霊形手術」です(前振り長ぇよ)。

 男性アイドルユウスケに憧れを抱く女子中学生きららは、美しい黒髪を持ち、お洒落な服で着飾った――しかし顔だけはお世辞にも美しいとは言えない少女。彼女はただ醜いというだけで周囲から蔑まれ、どうにもならない自分の顔を憎み続けていた。
 そんな彼女に目をつけたのが妖怪ずんべら(今回は女)。美を求め狂う女を見るのが好きだというずんべらは、きららに「霊形手術」を施す。きららは人魂の天麩羅を食べさせられて意識を失い、眠っている間に「手術」を経て、ついに理想の美貌を手に入れた。……自分の本当の顔が剥がされ、代わりに死人の顔を貼られたとも知らずに。
 美しくなったことで世界が一変し、幸福の絶頂に立つきらら。だがそんな彼女にユウスケは、たとえ前の顔であっても自分はきららのことが好きだった――と告白する。しかしその言葉は、かえって今のきららを傷つけるものでしかなかった。
 やがて自分の顔に起きた恐ろしい真実を知ったきらら。鬼太郎はずんべらに、奪った顔を返すように言う。なぜか素直に言うことを聞くずんべらだが、いざ元の顔が返されようとした瞬間、きららは脱兎のごとく逃げ出した――。

 ……以上、あらすじはこんな感じで。
 顔にちなんだカットが多用され、きららが振り向こうとするたびに見ている側もドキリとする、効果的な演出が光っていました。
 さらに今回は、オチが印象的でした。ユウスケの真の愛によって、元の顔を取り戻すことを決意したきらら。と見せかけて……。
 いや、ここで何かしらどんでん返しがあるだろうことは予測していましたが、どのような結末になるかは、いろいろな可能性が考えられたと思います。
 ちなみに僕がとっさに予想したのは、「実はユウスケも過去に霊形手術を受けていて、本当は作り物の顔なんじゃないか」というオチ。いや、だってあんな心の清い男なんているわけないしさ。←断言
 ユウスケにも何か裏があるはず――と踏んだのですが、見事にハズレでした。まあ、今回のずんべらは、野郎は対象外だったみたいなんで、仕方ないですね。
 (あと、一言茶化していいですか? 女子中学生に手を出したら事案だぜ、兄ちゃん。)

 で、最終的にきららは自分の顔を捨て、美貌のまま(実質、自身が新たな「ずんべら」となって)生きていくことを選択。ユウスケにアカンベーをして微笑み去っていく彼女の姿は実に可憐で、ホラーのバッドエンドなど微塵も感じさせない終わり方でしたが……あるいはこれも、意図された演出だったのかもしれません。
 もしきららの迎えた結末が(第二期のように)おどろおどろしいものであれば、それは紛うことなきバッドエンドであり、彼女が最悪の選択をしてしまったのだと断言できたでしょう。
 しかし恋人よりも美貌を選んだきららに訪れたのは、惨劇ではなく幸せでした。果たして彼女の異常な選択は、過ちだったのか、それとも……?
 原作「霊形手術」のラストで、顔を失った三人がある種の幸福を手に入れたように、きららの末路もまた、狂気とも幸福とも取れる描き方が為されたのではないか――と僕には思えます。

 で、今回は珍しく、視聴後にDVDで第二期版も鑑賞。それを見て気づいたことがありました。
 まず第六期版は「美貌を求める女」というテーマからして、原作の再アニメ化ではなく、第二期版のリメイクを目指したんだな、と感じました。ずんべらという妖怪を用意したところも第二期を踏襲してのことでしょう。そしてきららは、三吉と月子の両方の役割を担う存在……と、ここまで考えたところで、ふと思いました。
 では、そのきららの憧れである男性アイドル・ユウスケとは、いったい「何」なのか、と。
 彼は絶対的な美貌を持ちながら、心からきららを――しかし顔ではなく中身を――愛する、実に純真な男でした。たとえ月子がどのような顔であっても絶対に愛すると言い切ってしまう彼は、まさに盲目的なほどの愛の持ち主。
 ……そう、ここで一つの可能性に気づきます。
 実は――このユウスケこそが、現代版三吉として用意されたキャラクターだったのではないでしょうか。

 顔の美醜という一点に注目してしまうと、あたかもきららが、月子と三吉を両立させているかのように思えます。ですが、実ははっきり「きらら=月子」、「ユウスケ=三吉」と割り振られていたのだと考えると、ここにある構造が見えてきます。
 月子は三吉の盲目的な愛を足蹴にして、己の美のみを求め、人間であることを捨てました。一方きららもまた、ユウスケの盲目的な愛を受け入れる素振りを見せながらも、最終的には彼を裏切り、美貌のままでいることを選びます。
 上の方でも書きましたが、このきららの選択は、自身が人間をやめ、新たな「ずんべら」(=顔のない妖怪)になったことを意味していたと見ていいでしょう。今回の妖怪ずんべらが、「かつては人間の女性だったが、美を求めて死に妖怪と化した」という設定なのは、おそらく、「顔の無いきららが死人を顔をまとって生き続ける」という結末にリンクさせる意図があったため――と思われます。
 ずんべらは、きららが最後に取るであろう選択を、完全に見抜いていました。それは、かつて人間だった頃のずんべらが、今のきららとまったく等しい感情を抱いていたから、なのでしょう。
 ……ユウスケの愛を捨て、自らの意志で妖怪と化したきらら。こうして見ると、第六期版「霊形手術」のきららとユウスケは、実に巧妙に、第二期の月子と三吉を踏襲していた――。そのような気がしてなりません。

 とは言えきららは、月子のように突出したナルシズムを持っているわけではありませんでした。
 きららは自分を着飾る一方で、間違いなくユウスケに恋をしていました。「元の顔のままでもよかった」と言うユウスケに対してきららが辛辣な言葉を吐いたのは、決して本心からではありません。自分が追い求めてきた「美貌」という絶対的な価値観を否定され、自分のこれまでの苦しみに一切の共感を得られないと知った絶望感に突き動かされてのこと――という側面が非常に大きかったものと思われます。
 だから、人間らしい心を持たない月子とは違って、きららはこの時点で、間違いなく人間の心を持っていました。
 何より、一度はユウスケの言葉に心を動かされ、顔を元に戻すことを受け入れました。
 この点が、悲劇を招いた月子とは異なり、きららにとってせめてもの救いだったのだ、と思います。

 そして――だからこそ、最後にきららが選んだ(おどろおどろしさを感じさせない)結末は、心のある人間なら誰もが陥り得る「正常な狂気」だった、とは言えないでしょうか。
 自分の顔に対する執着心は、女も男も関係なく、人間であれば誰もが抱くもの。それは素敵な恋にも勝るほど抗いがたい、真の意味で救い様のない、おぞましい欲望――なのかもしれません。

 原作とも、そして第二期版とも異なる、大きな魅力を抱えた第六期版「霊形手術」。
 純粋にのっぺらぼうを題材にしたホラーとしても完成度が高く、すっきりできない結末にもやもやした先には、意外な哲学が隠されていた――(いや、ほぼただの深読みでしょうが)。
 しっかり堪能させていただきました。


 さて来週は……境港だ! ←そこかよ!
 はい、「海座頭」ですね。第五期では欠席だった巨大鮫さんは出てくるんでしょうか。
 ではまた次回!

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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第14話『まくら返しと幻の夢』 感想

 感想を書く前に、まずは先月28日にあった、キャスト関係のお報せについて。
 いったい何事かと思いきや、鬼太郎役の沢城さんが産休・育休を取られるとのこと。
 慶事ですので、ここは素直におめでとうございますと申し上げます。

 今後のキャストについてどうなるか(おそらく、誰がやるか/完全交代か/それとも代役かといった諸々)は未定だそうです。
 ただこのようなことを言うと、声優ファンのかたや実際に声優業に就かれているかたからは、いい顔をされないかもしれませんが――「中の人が誰になったからと言って、鬼太郎が鬼太郎であることには変わりない」というのが僕の考えです。
 制作サイドの中に第六期なりの鬼太郎像がきちんとある以上、役者が交代したとしても、そこに大きなブレが生じることはあまりないでしょう。ですので、キャスト交代による不安は一切ありません。
 きっといい人選をしてくださるものと信じています。


 さて、ここから今週の感想。
 今回の原作は「まくら返し」。ただし当のまくら返しは敵としての登場ではなく、いわゆる助っ人のポジションでした。
 一応サブタイトルには彼の名前が入っていますし、「人間が夢の世界に囚われ目覚めなくなる」「虹の橋が登場する」など原作の要素もあちこちにありましたが、敵妖怪が別に設定されていたこともあって、ほぼ「まくら返しが脇役でゲスト出演したオリジナルストーリー」といった印象を受けました。
 ……と、このような書き方をすると、何だか批判しているかのようですが、決してそんなことはないです。ただのマニア特有の原作比較癖だと思ってスルーしてください。
 だいたい今週は面白かったしね!

 今回のテーマは「夢」と「父親」。
 作中設定および原作・旧アニメでは、まくら返しは子供をさらう妖怪でしたが、今回の敵である「夢操りの鈴の少女」がターゲットにしたのは、現実世界に疲れた大人達。
 彼らが夢の中で楽しかった子供時代に戻り、抜け出せなくなる――という流れは、「現実からの逃避先を異界に求める」という水木作品の特徴の一つをしっかりと受け継いでいます。
 過去の似たようなエピソードとして、第四期の「恐怖!妖怪くびれ鬼」を思い出しました。あちらの行き先は夢の世界ではなく黄泉の国でしたが、疲れた大人が妖怪の罠にはまって子供時代の幻影に囚われてしまうという点で、かなり共通しています。

 ともあれ、そんな夢に囚われた大人達を助けるため、鬼太郎はまくら返しの協力を得て夢の世界へ。
 虹の橋はリモコン下駄でしか渡れない――という原作の設定は今回はなく、ねこ娘もまなちゃんも、ゲストもマサシくんも普通に渡っていました。
 しかし思わぬアクシデントで橋が崩落! ここの部分、とてもテンポのいいコメディタッチで良かったです。
 落下中のねこ姉さんは、猫ばりにクルンクルンしてましたが、落ちた先で八頭身の鬼太郎にキャッチされてそのまま結婚……という夢に囚われ、あっさりフェードアウト。
 それがお主の願望か、このツンデレめ。しかし八頭身の鬼太郎は頭だけそのままでなんか変……と言いたいところだけど、たぶん後々の展開を考慮して、敢えて変にしていたのでは、とも思います。
 いや、だって後で、もっとかっこいい八頭身鬼太郎が出てきちゃうしね。
 一方まなちゃんも夢の中で……うん、この子はいったい何を望んでるんだろう(笑)。妖怪と友達になりたいってことなのか。

 そんな女子二人は放置され、鬼太郎とマサシは、夢に囚われているマサシの父のもとへ。
 しかし今回の黒幕である「夢操りの鈴の少女」は、大人達を解放するつもりはなく、逆に彼らに鬼太郎を襲わせる。その方法は、何と巨大ロボの召喚! おや、突然作画レベルが一気に上昇したぞ?
 ……ちなみにロボのモチーフがマジンガーZなのは、やはり囚われた大人達の年代を考慮してのことでしょうか。
 その後ついに本性を現し、直接鬼太郎に襲いかかる少女。彼女はかつて川の神に生け贄に捧げられた可哀想な子だった――という背景が明らかになりますが、だからといって、「少女の心を宥めて解決」というありきたりな展開にしなかったところは好印象。
 だいたいこの子、敗れて力を失った後も、邪悪なままでしたからね。現実世界で生きる決意をして去っていくマサシの父親に、いつかまた絶望する日が来ることを祈って牙剥き出しで見送るという、実にステキな性格。
 この手の可哀想な背景を持つ女の子が、過去作では軒並み「いい子」として描かれてきたことを思うと、今回の名もなき少女は、かなり強いインパクトを残してくれました。

 で――その少女を今回破ったのは、鬼太郎の父親。
 ええ、目玉おやじじゃないんです。「鬼太郎の父親」です。
 そして目玉じゃないけど、今回の一番の目玉でした。
 目玉おやじが夢の世界特有の力で、過去の肉体を一時的に取り戻した――という設定の彼。その姿は、原作(と今期OP)にある包帯まみれの怪人……ではなく、鬼太郎をそのまま大人にしたような和装イケメンオヤジ。
 しかしあの包帯姿はもともと、病ゆえのものでしたからね。健康だった時の父親の姿というのは、実は原作・アニメ版含めて過去に描写が一切ありませんでした。したがって、設定に矛盾は生じていません。
 ついでに言えば、先祖伝来であるチャンチャンコを身に着けているのも、設定に忠実な証。鬼太郎と同じ技を使うのだって当然のこと。展開がぶっ飛びすぎていて一瞬気づきにくいのですが、実はそういった設定面が最大限に配慮されていた――という点は要注目でしょう。
 ちなみに髪の色は、白髪とも取れますし、原作版鬼太郎の髪色に準じたとも取れます。どっちなんでしょうね。
 そして野沢さんの声が目玉ボイスからヒーローボイスに切り替わる! この言い知れぬ説得力、さすがでした!
 総じてぶっ飛んではいたものの、一回きりだからこそOKなぶっ飛び方でもあったと思います。まあ、乗りとしては五期に近かった気もしますが(笑)。
 しかしそれ以前に、「自分が肉体を失ったことで鬼太郎に苦労をかけてきた」という目玉おやじの想いがしっかり描写されていたため、そこから繋がった最大のカタルシスとして、僕は充分納得し、満足できました。

 鬼太郎親子に絡めてもう一点、注目ポイントが。
 今回はワンカットのみでしたが、鬼太郎の潰れた左目が、原作同様にはっきりと描写されていました。
 僕の記憶にある限り、三期以降のアニメでこの左目がきちんと描かれたケースは、皆無だったと思います。アニメ版「墓場鬼太郎」ですら描写を避けた部分でしたので、もう完全に放送規制に引っかかるものと思っていましたが……。
 これは、十年ほどの間に業界の流れが変わったと見ていいのでしょうか。それとも、鬼太郎というビッグタイトルだからこその特例でしょうか。
 何にせよ、好ましいことです。

 最後に新ED。
 毛目玉と一緒に、唐突にオモチャの宣伝が紛れてるんですが、どういうこと?(笑)

 そして次回予告は……ん、のっぺらぼう? それとも白粉婆?
 違う、こ、これは……「霊形手術」だぁ!
 アニメ版ではすっかりお約束となった、鬼太郎作品以外の水木短編を原作にしたエピソード。今期の、そのトップバッターですね。
 二期では屈指の名作と呼べる仕上がりになっていた「霊形手術」ですが、今期ではどうなるでしょうか。
 ハードルいっぱい上げて楽しみに待ちます!

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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第13話『欲望の金剛石!輪入道の罠』 感想

 今回のエピソードは「ダイヤモンド妖怪」。
 もともと簡素だった原作のストーリーを、鬼太郎とねずみ男の友情に加えて、「欲望」というキーワードを軸に据えることで、大きく膨らませておりました。
 もっとも仕上がり自体は、割と箸休め的なものに収まっていたと思います(鏡じじいの時もこれ言ったな……。ええ、オブラートですよ)。

 今回の敵妖怪・輪入道は、鬼太郎作品では何かとメジャーな存在。
 メインで登場したエピソードこそ、今回の原作である「ダイヤモンド妖怪」だけですが、それ以外の話にもモブとして何度も登場。鬼太郎の仲間扱いで戦いに参加したことも多く、それを受けて、過去に発売されたPS2用タクティカルRPG『ゲゲゲの鬼太郎 異聞妖怪奇譚』では、条件を満たすことで味方ユニットにできるという粋な計らいが為されていました。←めっちゃ余談
 一方、本来の妖怪としての輪入道というのは、これは江戸時代の画家・鳥山石燕が、当時メジャーだった片輪車(かたわぐるま)の怪談をベースに創作したキャラクターです。どんな怪談かと言うと――。

 ……昔、京都に片輪車という化け物がいて、夜な夜な道を走るという噂が流れた。
 ある女房が「いったいどんなものか」と思い、夜、家から外の様子を窺っていると、表の道を片方だけの車輪が転がってきた。
 車輪には、引きちぎられた人間の足がぶら下がっている。
 ……と、突然車輪が人間のようにものを言った。
「我を見んよりは、内に入りて汝が子を見よ」
 女房が急いで子供のもとへ行くと、子供は肩から股までがバッサリと引き裂かれ、千切れた片足はどこにもなかった。つまり、さっき化け物がぶら下げていた、あの足は……。

 とまあ、こんな話です。江戸時代の怪談は、意外にもスプラッターなものがいっぱいだったりします。
 ただしこの類話はいくつかあって、「ただの車輪ではなく、車輪が片方しかない牛車に女が乗っているという姿で現れた」とか、「子供は殺されるのではなく、さらわれてしまう」とか、「女房が心から詫びたら子供が返ってきた」とか、バリエーションは様々です。
 ただ、石燕の輪入道については、僕が上の方で紹介した話がベースになっているようです。
 石燕よりも以前にこの怪談を絵にした人が、片輪車の化け物を、「車輪の中央に人の顔が付いている」という姿で表しているんですね。もちろん話の中では、あくまで「ただの車輪」でしかないんですが、そこは絵画表現というやつです。そして石燕は、この先人の絵を基に、車輪の中央に顔がついた妖怪を描き、「輪入道」という独自の妖怪に仕立てた――というわけです。
 ただし一方で、石燕はこれとは別に、「片輪車」という妖怪も描いています。こちらは、片方だけの車輪に女が載っている――という別バージョンの姿を採用。つまり、根っこは同じ「片輪車の怪談」だったものを、石燕は「輪入道」と「片輪車」の二つに分けてしまったのですね。
 で、さらにその石燕を参考にした水木先生も、やはり両者を別物として紹介。
 ……こうした経緯から、現在流通している妖怪本の大多数が、「片輪車」と「輪入道」を別々の項目に分けて扱っています。

 ちなみにアニメ版鬼太郎の第五期でも、輪入道と片輪車は別々の妖怪として登場しました。
 余談ですが、この時のアニメ版片輪車は、名前が「片車輪」となっていました。これは、アニメに登場するだいぶ前から一部の媒体で為されていた「配慮」です。
 ……名前の響きだけでクレームを入れてくる人がいるからですね。困ったもんです。 ←これもオブラートに包んだコメント

 輪入道の薀蓄は以上。
 あとは今回のエピソードの見所を……と行きたいところなのですが、あまり「これ」というものがなかったので、どうしたものかと。
 とりあえず、「ダイヤを量産すると価値が暴落する」という部分に言及したのは、よかったと思います。まあ、それを管理するシンジケートがいて、どう見ても白人マフィアなのに名前は日本人という、妙なツッコミどころはありましたが……。
 あと、輪入道に与える魂を確保するために、世界中の難民・貧民を連れてくるという発想も、面白かったです。入管仕事しろ。
 ていうか六期の悪人は、やることがいちいち生々しいですね。「電気妖怪」の兄ちゃんも相当でしたし。

 ところで、目玉親父はシャンプーでどこ洗ってるんでしょうか(笑)。


 今回の感想はこれにてお開き。
 次回は、これまたお馴染みの「まくら返し」。いったいどんなアレンジになるでしょうか。
 ではまた。オエオエオー。

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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第12話『首都壊滅!恐怖の妖怪獣』 感想

 今回は「妖怪獣」後編。

 総理が保身のために八百八狸に政権を譲渡したことにより、狸が支配する独裁国家となってしまった日本。
 原作では、美女は女中として狸に奉仕し、男はソーセージにされる――という恐ろしい未来が待ち構えていましたが、アニメ版では人間はあからさまな奴隷にはされず、あくまで支配を受けながら日常生活を送ります。一見穏やかですが、これはリアルな独裁国家の光景そのものですね。
 一部の人間は狸の尻尾をつけますが、これは狸への従属の証ということでしょうか。少なくともこの尻尾をつけた者は、付けてない者に対して横暴に振る舞うようになります。独裁者に忠誠を誓うことで、疑似的に権力を得るという構図ですね。
 ちなみに原作では、この尻尾は警察にのみつけられ、彼らをコントロールするための装置として扱われていました。

 ……余談ですが、今回のアニメ版の尻尾は、アライグマやレッサーパンダのものですね。よく誤解されているのですが、実際の狸の尾に縞模様はありません(拙作『異世界妖怪サモナー』の挿絵のキャラデザを決める際も、この辺は念入りに打ち合わせした部分でした)。なのでここは、ちょっと気になりました。

 余談はともかく、こうして狂ってしまった日本では、人間達の悪意も増幅。
 どうやら黒いオッサン(仮)の目的はこれにあるようですが……それはまた今回の終盤で見えてくることなので、後回しにして。

 そんな中、石にされた鬼太郎を助け出すべく、狸の本拠地に乗り込む鬼太郎ファミリー&まなちゃん。ぬりかべの塗り込め攻撃や、砂かけ婆の砂太鼓など、原作ではお馴染みの技も炸裂。
 さらに原作版を知っていれば、一反木綿の活躍がやはり嬉しいですね。原作の「妖怪獣」が連載された当時は、まだ鬼太郎ファミリーという概念が固まっていなかったため(それ以前に「妖怪大戦争」で戦死してるしね)、鬼太郎、目玉親父、ねずみ男、一反木綿の四人だけで八百八狸事件を解決していました。
 それを受けて今回のエピソードでも、刑部狸への強烈な反撃という大役を一反木綿が担っています。また同時に、狸化してしまったまなちゃんを事実上救う形にもなりました。
 まあ、そのまなちゃんは今回、割と鬼太郎とイチャイチャ気味(?)だったわけですが……。

 一方今回は、幹部格の狸達の個性も描かれました。
 原作では名前の無かったシルクハット狸と女狸は、それぞれ団一郎、団二郎という名前を獲得。さらに団一郎が幹部のトップという立ち位置になっています。戦闘能力も、狼男ばりに向上しました。
 ただし団三郎は三番手に降格。団三郎といえば、本来の伝承では有名なムジナ(この場合は、イコール狸)の妖怪。鬼太郎作品では八百八狸の一員という形で登場しましたが、それでも刑部狸に次ぐポジションを得ていましたから、今回の降格は名前による完全なトバッチリでしたね。^^;

 そして倒された刑部狸は怨霊となって、蛟龍と融合。ここから鬼太郎VS蛟龍の戦いが、妖怪獣編の最後の山場として描かれました。
 この戦い自体は迫力あるものでしたが――。
 ……やはり原作や歴代アニメ版を見ていると、かなり物足りないものがあります。
 もともと原作では、ここから第二の妖怪獣「なまず」が出現。さらに要石が狸達の第三の手駒となって空を飛び回り、日本は米軍に出動を要請する――という、一大スペクタクルへと展開していきました。
 これについては、純粋な尺の問題か、あるいは……やはりいくつかのアニメ作品同様、震災に配慮した結果なんでしょうか。
 なまずは地震の象徴ですから、正直、「もしかしたら出番は無くなるかも……」という危惧はありました。
 僕自身は、こういった現実の事件や災害を作品規制に繋げていくという流れは、決して好きではありません。ただ、何をもって今回のエピソードが原作の前半部分だけで区切られたのか、その実情は知り様もないので、「今回は原作の方が面白かったね」と、嫌なマニア面で言うに留めておこうと思います。

 気を取り直してラストは、黒いオッサンの不穏な動きで終幕。
 まなちゃんの手には、「木」という謎の刻印が刻まれました。木で始まる、呪術にも関する言葉といえば……やはり五行、「木火土金水」を思い浮かべます。ということは、オッサンの正体は陰陽師か何かでしょうか。
 ちなみに実際の伝承の方では、肉体が五行の象徴色で色分けされた妖怪がいます。水木作品ではあまり扱われませんが、有名な鬼、酒呑童子がそれです。
 そう言えばオッサンの頭の中で、誰かが侍に切り殺される映像が流れてましたが……果たして。

 次回は「ダイヤモンド妖怪」。個人的には第三期バージョンが怖くて好きでした。
 あと来週は、僕の大好きなオエオエオーの聴き納めですね。心して迎えます。
 ではまた来週。


※放送日の翌日、関西の方で大きな地震がありました。上記の感想については、その点は踏まえずに抱いたものを、素直にそのまま書かせていただいております。ご了承ください。


テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
ジャンル : アニメ・コミック

tag : ゲゲゲの鬼太郎 水木しげる 妖怪 アニメ

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