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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第57話『鮮血の貴公子 ラ・セーヌ』 感想

 ついに登場、吸血鬼ラ・セーヌ!
 以前、西洋妖怪予習編の記事を書いた時にも触れたキャラクターですが、結局第3クールでは参戦せず……。しかし今回、ついに西洋妖怪の一員として、その姿を見せてくれました。
 ちなみに前回も少し書きましたが、ラ・セーヌがアニメに登場するのは、何と第一期ぶり!
 いやはや、長い「鬼太郎」史から見ても、吸血鬼ラ・セーヌは重要な作品に登場するキャラクターなのですが、なかなか映像化に恵まれない損な役回りを負っていたようです。理由は……はい、この後詳しく書きます。
 ともあれ、まずは登場に乾杯。話も面白かったですしね!

 さて、今回の原作は「手」。とてもシンプルなタイトルです。
 この「手」、上で重要な作品と書きましたがそのとおりで、実は鬼太郎が少年誌に初めて登場した際のエピソードが、これだったのです。言わば第一話です。
 その第一話に登場したラ・セーヌ(原作表記は「ラ=セーヌ」)は、鬼太郎が少年誌上で初めて戦った敵。「ウルトラマン」に喩えるならベムラー。いや、いちいちウルトラマンに喩える必要はないんですが……。とにかくラ・セーヌは、それぐらい由緒正しいキャラクターだったというわけですね。
 ちなみにストーリーはというと――。

 フランスからやってきた吸血鬼ラ=セーヌと、その召使いの殺し屋、ザ=マンモス。二人は邪魔な鬼太郎を亡き者にしようと襲撃するが、鬼太郎は手首一つを残して消えてしまう。ラ=セーヌは、鬼太郎の抹殺に成功したと思い込むが……。
 しかし残された鬼太郎の手首が、まるで生きているかのように這い回り、ラ=セーヌとマンモスを翻弄。恐怖に駆られた二人は誰も来ない山荘に逃げるも、手首は執拗に二人を追い詰めていく――。

 とまあ、こんな感じです。
 吸血鬼という怪奇キャラクターが鬼太郎の超然的な力に翻弄されるという、貸本版「墓場鬼太郎」の作風を色濃く残すストーリー。この話のベースになっているのは、おそらく「墓場鬼太郎」のエピソードの一つ、「怪奇一番勝負」でしょう。
 鬼太郎が見せる能力も、後続の髪の毛針やリモコン下駄に比べて、だいぶ怪奇色が強いものです。この動き回る手首は「リモコン手」という名前を得て、原作版鬼太郎の主要能力の一つにカウントされています。

 ……それはともかく、この「手」という話に登場するラ=セーヌは、鬼太郎の能力に翻弄されるばかりで、吸血鬼(というか妖怪)らしい能力を見せることはほぼ皆無。記念すべきキャラクターながら、強敵という印象はありませんでした。
 しかしこのラ・セーヌが、後に強敵として、別のエピソードに再登場します。
 そのタイトルもずばり、「吸血鬼ラ・セーヌ」。こちらは80年代マガジン版、通称「新編ゲゲゲの鬼太郎」の1エピソードです。ここに登場するラ・セーヌは、「手」に登場したラ=セーヌと同一の存在というわけではなく、あくまで同名・同外見のパラレル的キャラクターのようですが、かつてと違って吸血鬼としての能力を遺憾なく発揮し、鬼太郎ファミリーと死闘を繰り広げました。
 80年代作品ということで、鬼太郎もヒーロー色が極めて高くなっていた時期であり、「手」のような怪奇に満ちた内容とはだいぶ趣の違う作風に仕上がっていました。

 そんなわけで――「手」と、「吸血鬼ラ・セーヌ」。方向性の異なる二作品に登場するラ・セーヌが、今回のアニメ版で、どちらに準拠して登場するのか。
 次回予告の段階では断言できない状態でしたが、もしかしたらアニメ向きの後者が採用されるのかな……なんて思っていたら、まさかの「手」!
 もうね、本編でマンモスが原作どおりの姿を現した時点で、「手だー!」ってなりましたよ。いや、どんな反応だよそれって言われても困るんですけどね?
(ちなみにアイキャッチでは、「吸血鬼ラ・セーヌ」の方の絵が使われていました。)
 しかしこの「手」という原作。これまで映像化の機会に乏しく、吸血鬼ラ・セーヌのアニメ登場を阻む大きな原因になっていたのは、間違いありません。そもそも映像化されない理由は……ええ、上に書いたあらすじでお分かりかと思います。

 だって、切断された手首が這い回るわけですからね。子供向け番組では難しいっていう……。

 ちなみに過去作を振り返ってみると、「手」が初めてアニメ化されたのは、第一期。ただしタイトルは「吸血鬼ラ・セーヌ」と改められ、手首ではなくリモコン下駄が吸血鬼を翻弄する形に改変されました。
 次にアニメ化されたのは、今回……って、あらら、一気に飛んじゃいましたね。
 ええ、それほどまでに「手」は、長らく映像化されてこなかった――というわけです。だからラ・セーヌの登場も、本当に久々なんです。
 そんな第六期バージョンで手首の代わりに活躍するのは、下駄ならぬチャンチャンコ。どれも鬼太郎にコントロールされる定番アイテムということで、リモコンのバリエーションに事欠かないのは鬼太郎の強みですね。

 ……なお、こちらもきちんと触れておくべきでしょう。
 実は「手」そのものではありませんが、「手」に関連するアニメエピソードは、他にいくつか存在しています。
 まずはアニメ版「墓場鬼太郎」の「怪奇一番勝負」。大人向けの深夜アニメとして作られた――という強みからか、原作どおり、もろに手首が這い回ります。もちろん釘打ちもされます。いや、これは自主規制されなくて正解でした。
 そしてもう一つは、第四期の「ぬらりひょんと蛇骨婆」。こちらは原作「妖怪ぬらりひょん」をベースとしたエピソード……と見せかけて、実は「手」との合わせ技。鬼太郎を亡き者にしたはずのぬらりひょんが、その下駄に翻弄される様が描かれます。
 原作「妖怪ぬらりひょん」にはリモコン手の活躍シーンがあるので、それに基づいた融合だったのかもしれません。まあ、アニメでは手首ではなく下駄なんですが……。いずれにしても、この「ぬらりひょんと蛇骨婆」は、僕が第四期で一番好きなエピソードを挙げるとしたらコレ! というぐらい傑作なので、未見のかたには是非お勧めしたいですね。
 ……ただし、いずれも「手」そのものをアニメ化したわけではないため、当然ラ・セーヌの出番は一切ありませんでした。つくづく恵まれない原作キャラクターだったと思います。

 余談ついでにもう一つ。
 アニメ版「鬼太郎」でリモコン手が直接描かれたエピソードは、上記の「怪奇一番勝負」以外に、第二期「ダイダラボッチ」があります。
 第二期は人体消失や白骨化みたいなトラウマシーンが結構ありましたが、その辺の表現規制が第一期より緩かったのは、時代的な許容があったのでしょうか。当時生まれていなかった僕には分かりません。
 何にしても、アニメでリモコン手が活躍した数少ないエピソードの一つとして、記憶しておきたいところです。


 はい、ここまで薀蓄と余談。←マジで長ぇよ
 ここから今週の感想です。

 手首をチャンチャンコに改めた、第六期版「手」。
 地獄の四将編、そして西洋妖怪編とも絡んだ、第六期ならではのエピソードながら、釘打ち、そして海へドボン(これは「鬼太郎夜話」のオマージュかな)と、原作初期のカラーを出してくれたのは嬉しいところです。

 そして再三言っているとおり、吸血鬼ラ・セーヌが久々にアニメに登場!
 って、めっちゃショタ化しとる!(笑)
 いや、タイトルに「貴公子」ってあるから美青年ぐらいには改変されるかなーと思っていたけど、縮んだのはだいぶ予想外でした。
 性格は他の西洋妖怪と同じくドSでしたが、一方でチャンチャンコが顔に絡まって抜けなくなったり、チャンチャンコの金庫脱出方法をめっちゃ早口で解説したりと、コメディ部分も程よく担当し、純粋に「嫌なやつ」で終わらせなかったのは良かったですね。
 最終的にラ・セーヌは、「マンモスに庇われ、石動に殺される」という形で同情を買うことにもなるため、コメディという形で緩和要素を入れたのは正解だったと思います。

 一方でマンモスは、まず外見は原作そのまま。いや、若干若くなったか。でも巨漢。しかし見た目はともかく、中身はだいぶ変わりました。
 まず身体能力が常人を超えた……というのは置いておくとして。とにかくラ・セーヌへの忠誠心の厚さや、時として主人の意に背いてでもその命を守ろうとするところなど、キャラクターとしての厚みがかなり増したと思います。
 で、このマンモスが巨漢だからこそ、彼が少年姿のラ・セーヌを守る絵が、ちょうどいい対比として映るんですね。
 原作や第一期の二人が「コンビ」だったのに対して、第六期の二人はまさに「主従」。最初はショタ化したラ・セーヌに驚きましたが(笑)、そのラ・セーヌをマンモスが庇って火の中から脱出したり、命を守るために叱咤したり……といった光景を見ていると、この巨漢とショタの組み合わせがとてもしっくり来るように思いました。
 ……で、そんな二人を容赦なく引き裂く石動。相変わらず空気読まない子でした。南無。

 なお、前回のエリートからの「吸血鬼ネタ二週連続」については、作中でフォローが入りました。どうやら、立て続けに吸血鬼が現れたのがポイントのようです。
 ……いや、そうは言っても、エリートの方は完全に独立したエピソードにしか見えなかったので、エリートが一連の吸血事件に絡んでいたっていうのは、明らかに脚本上の後付けでしょうね。アニエスさん(こちらも久々!)も、「関係があるのかもしれない」程度に言葉を留めていましたし。
 そもそもエリートのエピソードは結構完成度が高かったので、変に後付け設定を盛るのは無粋に思えます。これは、今週の二つある不満点の一つです。
 ……ちなみにもう一つの不満点は、ラ・セーヌと鬼太郎の直接対決が、完全にスピード勝負に終始していたことですね。いや、これって個人的には、見てても「ふーん、二人とも速いんだね」ぐらいしか感想が出てこないんで、あまり乗れないんですよ。
 まあ、ラ・セーヌは速さが武器でもいいんですけど、鬼太郎がそれに打ち勝つ手段が、「お前の動きは見切った。僕はもっと速く動く」じゃ、まったく芸がないなぁ、と。脚本さん、ここもうちょっと頑張ってほしかったです。

 とまあ、後付け設定に不満はあるものの、「世界中で吸血妖怪が暗躍してる」って展開は、結構ワクワクするものがありますね。
 彼らの目的は、集めた血液を使ってバックベアードを復活させること。そしてアニエスの口から出た、ペナンガランやアササボンサンの名前――。
 もうこれは、アレですね! 妖怪樹をベアードに置き換えた上での、「血戦小笠原」が確定ですね!
 そしてドラキュラポジションには、相変わらずカミーラさんが来ると思われます。タイミング的には、たぶん今クールの終わりぐらいになるのかな? 地獄の四将編は複数クール跨ぎそうな感じだし。
 まあ勝手な憶測ですけど。いやもう、バッチリ期待しておりますよ。

 ということで、第六期版「手」。
 楽しく視聴させていただきました。


 さて次回は……「かまぼこ」!
 いいですね。ノベライズした時の記憶が蘇ります(笑)。
 原作からしてだいぶ変則的な内容でしたが、第六期版がどのような形になるのか、今から楽しみにしたいと思います。
 ではまた!

テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
ジャンル : アニメ・コミック

tag : ゲゲゲの鬼太郎 水木しげる 妖怪 アニメ

ゲゲゲの鬼太郎第6期・第56話『魅惑の旋律 吸血鬼エリート』 感想

 今回の原作は「吸血鬼エリート」。昭和マガジン版の中でも初期に位置する長編ですが、実は貸本版「墓場鬼太郎」シリーズの一編、「霧の中のジョニー」をリライトしたものです。
 長編なのは、ベースが貸本(=本一冊に相当)のためですね。また、鬼太郎が中盤で肉体を溶かされてしまい、目玉おやじとねずみ男が協力してエリートと対決するという展開も、貸本時代の「まだヒーローになる以前の鬼太郎」の名残と言えそうです。
 とは言え、鬼太郎は溶かされてなお、持ち前の生命力の強さでエリートを翻弄します。これは時代を問わず、鬼太郎というキャラクターの黄金パターンと言えるでしょう。

 さて、そんな「吸血鬼エリート」は、過去には(二期と)三期を除くすべてのシーズンでアニメ化。また「霧の中のジョニー」としても、アニメ版「墓場鬼太郎」で映像化されました。
 個人的に印象に残っているのは、やはり第四期。エリート役に佐野史郎さんを迎え、オリジナルのテーマソングまで作られた豪華な回でした。歌の中に「チュチニチオチュ」なんて歌詞が盛り込まれていて、原作ファンとしてもニヤリ。
 まあもっとも、白骨になった犠牲者達が、エリートが死んだことで生き返る展開は、ちょっといただけませんでしたが……(これは以前にも書いたことですね)。その点を除けば、登場するレギュラー陣を鬼太郎・目玉・ねずみ男という原作どおりの三人に絞った点も含めて、かなり満足できる良回だったと思います。
 ……余談ですが、エリートは実写版も存在します。月曜ドラマランドバージョンですね。まあ、余談です(笑)。

 で、今回の第六期バージョン。
 うん、面白かったです。素直に。
 「エリート」という名前。その正体が巨大なコウモリであるという原作要素(ただし貸本版では素の吸血鬼でした)。さらに、原作が「霧の中のジョニー」のリライトであるというネタまで絡め、吸血鬼エリートというキャラクターのバックボーンを一新。
 「もともと吸血鬼の召使いとして虐げられていた、ジョニーという名のコウモリが、吸血鬼達を蹴落として伸し上がった存在」という形でリニューアルされた彼は、今までにない斬新な――しかし不思議としっくり来る「吸血鬼エリート」として、見事に完成されていたと思います。
 そんな彼とねずみ男との間にシンパシーが生まれ、そのねずみ男が最後にエリート……ではなくジョニーと対決。これも巧妙な原作再現ながら、非常にドラマチックで見応えのあるシーンになっていました。
 そして、力を失ったジョニーのもとへコウモリ達が集い、館に火を放って心中するラスト。なるほど、ジョニーも元はコウモリですから、彼らは部下ではなく、仲間なのですね。泣かせます。
 ……ちなみに脚本家のかた曰く、最後の炎上シーンは「空の大怪獣ラドン」をイメージしたのだとか。何でやねん(笑)。

 他にも、事件が解決した途端に鬼太郎への態度がぞんざいになる依頼者とか、冒頭で倒されたよく分からん妖怪とか、吸血鬼のイメージ絵がどこかで見たような顔触れだったりとか、細かい見所もあり。
 元が大ネタであるがゆえの、気合の入った良回だったと思います。


 さて次回は、西洋妖怪再登場。
 そして――吸血鬼ラ・セーヌ!
 何とビックリ、アニメ版に登場するのは第一期ぶりのキャラクターですよ。いや、吸血鬼が二週連続ってのもちょっとビックリですけど(笑)、何にしても楽しみです。
 ではまた!

テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
ジャンル : アニメ・コミック

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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第55話『狒々のハラスメント地獄』 感想

 ×狒々がハラスメントをして地獄を見せる。
 ○狒々がハラスメント認定されすぎて地獄を見る。

 次回予告の時点で巧妙なミスリードが仕込まれてた(笑)。

 今回のゲスト妖怪は狒々。原作では「鬼太郎国盗り物語」シリーズの一エピソード、「妖怪大相撲の巻」に登場するキャラクターです。鬼太郎を狙うムーの刺客として、ベアードとともに相撲大会で鬼太郎を亡き者にしようと企みますが、ベアードと手柄を奪い合った結果殺されてしまう(ただし後で生き返る)という、損な役回りでした。
 ……が、アニメ版の狒々は、この「妖怪大相撲の巻」とは無関係。あくまで妖怪図鑑からの出張組という扱いですね。

 余談ですが、昭和マガジン版のエピソード「モウリョウ」に登場する妖怪モウリョウのデザインは、この狒々がベースになっています。見比べてみると、唇の形がそっくりなのが分かります。
 さらに余談ですが、水木先生の描く狒々のベースになった絵は、お馴染み鳥山石燕の描いた「比々」。唇が捲れ上がっているのも共通しています。比々は、もちろん実在する動物のヒヒを妖怪視したものであり、唇の形も実際のヒヒの習性を参考にしたものと思われます。

 ……で、今回のお話。
 言ってしまえば風刺&ギャグ回ですね。昭和脳なオッサン狒々が現代の若者のためにテニスの特訓をするも、何をやってもハラスメント認定されるようになり、苦悩したりブチ切れたり。そんな様子がテンポのいいコメディとして展開していきます。
 それにしても第六期全体に言えることですが、ギャグ回はだいたい高速で話が進みますね。ハイテンションで一気に笑わせるという、要は今風のアニメの手法ではあるわけですが、僕は結構好きです。

 そして狒々が味わうハラスメント(と認定される)地獄の数々。
 うさぎ跳びの強要や水を飲ませないなど、まさに選手にとってデメリットでしかない昭和的指導をしているうちは、パワハラ野郎として成立していた狒々ですが――。選手との仲がこじれた結果、肩に触れて笑えばセクハラ。香水をつければスメハラ。肉を焼けばグルハラ。とにかく何が何でもハラスメント。そして記者会見からの、マスコミによるバッシング。まさに世相を反映した、現代の風刺でした。
 実際、オッサンの行為がハラスメント認定され、それに対して擁護から批判まであれこれ意見が飛び交うというのは、ネット界隈ではよく見る光景です。ただ、決して面白可笑しい問題では済まないケースも多いですね。

 たとえどんな意図を持った行為であっても、受けた側が苦痛だと感じさえすれば、それはハラスメントになる――。これがハラスメント認定の定義です。でなければ被害者を守ることはできません。ただ、これは言い換えれば、個人の主観一つで人を理不尽に糾弾できる――ということにもなります。
 しかもハラスメント認定された側には、社会的制裁が待っている。となれば、本来は決して、安易に人をハラスメント認定すべきではないはずです。第三者(マスコミと活動家は除く)のジャッジも込みでの判断が必要になりますし、そこをすっ飛ばして、わざわざ新しいハラスメントジャンルまで作って相手に社会的制裁を与えるなら、それは重大な人権侵害になり得る危険性があります。
 極端な話、「あなたのルックスが気に入らないから、あなたが私の視界に入るのはハラスメントだ」なんて理屈が成り立ってしまう。いや、そんなもの成り立ったら堪らないわけですが、現状では「○○ハラ」という新ジャンルさえでっち上げれば、ほぼこの域に近いことが可能になっている。
 ただもちろん、「だからハラスメント認定は一切するな」ということではないんですよね。誰が見ても問題だと思えるような案件であれば、それはいくらでも糾弾すべきです。
 しかし、この辺の線引きというのは曖昧で、明確なルールというものが設けづらいのが実情。じゃあどうすればいいかっていうと、結局、「嫌なら嫌だと言う」「言っても効果がない、あるいは言えないなら、他の誰かに相談する」というステップは、絶対に必要なんじゃないかと思う次第です。
 もう一度繰り返しますが、ハラスメント認定というのは、相手に社会的制裁を与える行為です。そこまでやるべき案件なのか、あるいは内輪の話し合いだけで解決可能なのかは、きちんと考えるべきでしょうね。

 ……と、ギャグ回の感想なのに、なぜか真面目な話になってしまいましたが(笑)。

 今回は、もう一人のゲストキャラである優実も、なかなか濃いキャラでした。途中からほったらかしになってしまったのは残念でしたが……。
 しかし、彼女が事件を通して何かを見つけるとか、曲がった根性を正すとか、そういう話にしなかったのは、おそらく意図的なものでしょう(新しいコーチは見つけたけど)。仮に優美が更生する話にしてしまうと、結局「狒々が正しくて優美が悪い」という一方的な視点のストーリーになってしまいます。
 今回のテーマはおそらく、ハラスメント認定という行為の是非。狒々には同情すべき点と否定すべき点の両方があり、優美もまた然り。正解が一つではないという実情も踏まえれば、その辺はあくまで視聴者の考えに委ねるのが妥当だったのでしょう。

 ちなみに「顔さえよければハラスメントにはならない」は、実際には少し違うと思います。
 正しくは、「相手のことが好きならハラスメントだとは感じない」です。
 まあ、だいたいそんなものでしょうな。もっとも、DV問題なんかはこの延長線上にあるケースも多いので、やはり笑って済ませられないところではあるのですが……。しかし、さすがに肉を焼くぐらいなら何も言われませんわ(笑)。
 ……そしてこの小ネタだけのために、唐突に森で焼き肉を始めるねこ娘。誰かツッコめ。

 というわけで、いろいろ考えさせられることが多かったですが、楽しいエピソードでした。
 今回はここまで。


 次回は、「吸血鬼エリート」!
 これは楽しみです。次回予告を見る限り、今までのエリートよりもホラー度高めになるのかな。
 ではまた!

テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
ジャンル : アニメ・コミック

tag : ゲゲゲの鬼太郎 水木しげる 妖怪 アニメ

ゲゲゲの鬼太郎第6期・第54話『泥田坊と命の大地』 感想

 今回の原作は「泥田坊」。過去には第二期の第一話として初アニメ化。以降毎シーズン映像化されている定番エピソードです。
 田圃を失うことになった泥田坊がその怒りを人間に向ける――という基本プロットは常に変わらず。しかし泥田坊が田を失う理由は、原作&過去のエピソードすべてにおいて、毎回異なっています。
 軍事基地。土地開発(漠然)。新幹線。農業の縮小。住宅地化。ゴルフ場&メガソーラー……。このように原因が次々と変わっているのは、やはりそれぞれの作品の、時代的(一部、政治思想的)な背景があってのことでしょう。
 ちなみに前回も少し触れましたが、アニメ版泥田坊のキャラクターデザインが原作どおりになったのは、実は第三期のみ。第六期は、巨大時のみ原作どおりで、終盤に出てくる小型泥田坊については、第五期に近いデザインになっていました。

 そんな泥田坊を巡るエピソードは、ストーリーそのものも毎回味付けが異なっているのですが――。
 今回の第六期は、「人間と妖怪の対立」という部分に主眼を置き、その中で鬼太郎がどちらの立ち位置に付くのか、その葛藤を描く――という、実に「第六期らしい」内容に仕上がっていたと思います。
 土地を奪われた被害者であると同時に、人間の言い分を聞かず躊躇なく殺す泥田坊。
 泥田坊から土地を奪いながらも、そこに自分達の「生」を求める人間。
 どちらにも理があり、非がある。しかし話し合いが成立せず、ただ滅ぼし合うしか道が残されていない――。そんな悲惨な関係の中で、狭間に立った鬼太郎を最終的に「決断」に向かわせたものは何だったのか。
 三十年前に救えなかった命(黒須の父)と、取り残された恨み(幼き日の黒須)。その連鎖を断ち切るため。あるいはもっと純粋に、目の前で散りかけている親子の命を守るため。結果的に鬼太郎は泥田坊を倒し、事件は解決します。
 しかしそれは鬼太郎にとって、苦い結末だったのかもしれません。人間と分かり合うことを覚えたからこその葛藤は、すべてが終わった後でも、鬼太郎の心で渦巻くのでしょう。

 そんなわけで、ストーリー、演出、キャラクターのすべてにおいて、どれもいろいろな意味で刺激的で、素敵な回だったと思います。
 目玉の動きにこだわった泥田坊の出現シーンも凄味があって素晴らしかったですが、それよりも凄味があったのが黒須社長(笑)。
 いや、なかなか濃いキャラでした。過去に泥田坊に襲われて片目を失ったという設定は、彼を、同じ片目である泥田坊と対等の立ち位置に据えるためでしょう。もしくは、鬼太郎も含めてのトライアングルになるのかもしれません。
 そして、きちんと理がある。正確は荒っぽいし、妖怪に対して憎悪を抱いているけれども、人のために真っ当に生きている。だから好感が持てます。

 昔から鬼太郎作品では、「人間が自然を破壊し妖怪の居場所を奪った結果、妖怪が人間に牙を剥く」というプロットが、頻繁に描かれてきました。そんな時は原作アニメ問わず、往々にして人間側が「悪」であるとされました(そりゃもうコテコテの悪人として描写されます)。
 特にアニメ版では、最終的に鬼太郎が妖怪側に立って人間を懲らしめるという展開も多く、逆に人間側に非が無い場合は、鬼太郎が仲介役となって和解に持ち込む――というのがお決まりだったわけです。
 もちろんこれは、アニメの対象年齢も考慮した上で、勧善懲悪や共存といったものを歴代スタッフが提示してきたからです。
 ところで、今回の黒須社長はどうだったでしょう。彼は「悪」でしょうか。それとも「善」でしょうか。
 答えは、どちらでもありません。……いや、彼は人としては「善」です。ただし妖怪にとっては「悪」です。
 このような人物を登場させた上で、死なせず、共存の道も歩ませず――ただし後味のいい幕引きに至らせたこと。これが、今回のエピソードを強く光らせる形になったのではないか、と僕は思います。

 今回の話を見ていて、ふと思い出したのが、第四期の「穴ぐら入道」のエピソードです。
 トンネル工事を進める人間が、真っ当な理を持ちながらも、「悪」として描かれていたこと。穴ぐら入道の自己犠牲を無視して工事を再開した彼に、鬼太郎が怒りのあまり拳を叩きつけ、力なく崩れ落ちるラスト。やるせない一方で、感情に任せて拳を振るうという「第四期の鬼太郎」らしからぬ行動に、見ていて戸惑いを覚えた記憶があります。
 おそらくあの時のエピソードは、今回の「泥田坊」と同じテーマを描いていたのでしょう。
 ただ、泥田坊と違って穴ぐら入道が善良な妖怪であったことで、人間側が完全に悪者になってしまい、何の救いもないムナクソなだけの終わり方になってしまったのは、今にして思えば残念なところです。

 話変わって、今回気になった点。
 ここまでの流れを覆すようで何なのですが……というか、今回だけに限らず、過去のいくつかの「泥田坊」のエピソードにも言えることなのですが。
 果たして泥田坊というキャラクターは、「人間と妖怪、文明と自然の対立」の象徴としてしまっていいものなんでしょうか。
 いや、田圃に執着する妖怪なんですよね? 田圃を潰されるのが嫌なんですよね?
 でも田圃って、思いっきり人間の文明の産物ですよね?
 本来自然の中にある植物を人間が管理する時点で、それはもはや自然そのものではないし、そもそも「農業=自然=善」という安易な発想はどうなのかと。
 そりゃ田圃に住んでる妖怪が住み家を奪われるのは可哀想ですが、そこに「文明への警鐘」というテーマを絡めると、途端に矛盾してしまうよな~、と思った次第であります。
 まあ、ささやかなツッコミです。はい。


 というわけで、今回はここまで。
 次回は狒々! 一応原作にも登場しているキャラクターですが、ストーリーはオリジナルでしょうね。
 ではまた!

テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
ジャンル : アニメ・コミック

tag : ゲゲゲの鬼太郎 水木しげる 妖怪 アニメ

ゲゲゲの鬼太郎第6期・第53話『自己愛暴発!ぬけ首危機一髪』 感想

 ……ふむ。
 ↑動画投稿ネタに興味がないのでいまいち感想が思い浮かばない人。

 今回の原作は「ぬけ首」。前回に引き続き、「新編ゲゲゲの鬼太郎」からの1エピソードになります。
 原作では、実力者でありながら知名度のない妖怪・ぬけ首が鬼太郎に嫉妬し、灼熱の頭で鬼太郎を襲撃。しかしその間にねずみ男が胴体を持ち去ってしまったため、頭を冷やすことができなくなり、今度は一転して大爆発の危機を迎える――という展開。
 ぬけ首が口先だけでなく、本当に鬼太郎を苦戦させるほど強かったところが妙に印象に残っていますが(笑)、今回のアニメ版では強さ云々よりも、知名度・人気へのこだわりに重点が置かれることになりました。

 で、そんなアニメ版ぬけ首と組んだのが、まさかのチャラトミ。
 第一話でいらんことをし、姑獲鳥の回でもいらんことをした彼が、まさかの更生編を与えられて主役になるとは。
 もっとも「主役になれないことへの苛立ち」を抱えた彼は、その結果暴走。原作でねずみ男が担った「ぬけ首の胴を隠す」という役割を引き継ぎ、しかもそれが意図的というからタチが悪かったですね。
 ……これが現実なら、身元割れからの居酒屋ごと炎上で結局解雇――という後日談が待っていたことでしょう。フィクションでよかったです。いや、むしろ現実ヤヴァい。何の話だ。

 あ、そうか。今回のキーワードは「炎上」か。


 そんなわけで、無味乾燥的になってしまいましたが、今回はここまで。
 次回は「泥田坊」。原作に近いキャラデザになるのは第三期以来ですかね。←なぜまずそこに目が行くのか。
 ではまた!

テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
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