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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第61話『豆腐小僧のカビパンデミック』 感想

 今回の原作は「豆腐小僧」。80年代マガジン版、いわゆる「新編ゲゲゲの鬼太郎」からの一本です。
 人間の度重なる森林破壊に怒りを覚えた豆腐小僧が、「食べると体にカビが生える豆腐」を使って人間達に復讐しようとするエピソード。……実はこちらも、以前僕が角川つばさ文庫でノベライズさせていただいたエピソードの一つだったりします。
 「自然を大切にしよう」という分かりやすいメッセージに加えて、豆腐小僧といういかにも妖怪らしい見た目のキャラクター、さらに鬼太郎ファミリー総活躍と、とても「入門編」向きのエピソードだったことから、一巻の第一話に選ばせていただきました。
 最後は和解で終わるところも、対象年齢的にはアリだったんじゃないかなー、と思います。

 とは言え、今回の第六期版は原作要素をほぼ抑え、だいぶアニメオリジナルに寄った話になっておりました。
 そもそも豆腐小僧は、アニメの方ではモブの仲間妖怪として何度も顔を出していましたから、それを原作どおりの敵キャラにするわけには行かなかったのでしょう。
 まあ、第三期の「あかなめ」や第五期の「オベベ沼の妖怪」のように、すでに味方として登場していたキャラクターとの対決エピソードが後から映像化された前例もありますから、その辺はシナリオ次第といったところではあるのですが……。
 しかしもう一点、今回の豆腐小僧のキャラ付けを語る上で、知識として押さえておきたいポイントがあります。

 それは何かと言うと――ずばり、本来の「豆腐小僧」という妖怪の変遷ですね。
 まず水木先生の妖怪図鑑を見ると、豆腐小僧という妖怪は、「その豆腐を食べると体中にカビが生えてしまう」という風に解説されています。もちろん「新編」のエピソードも、この特徴に基づいて創られています。
 そして水木先生の妖怪図鑑と言えば、少なくとも90年代ぐらいまでは、「妖怪を解説した本」のスタンダードでした。だいたいどの妖怪本も、水木先生の著書を参考にしていました。ですから、昭和~90年代ぐらいに妖怪に親しんでいれば、「豆腐小僧=カビを生やす妖怪」という説明文が頭の中に残っていらっしゃる方も多いかもしれません。

 ところが、そこに転機が訪れます。京極夏彦さんの登場ですね。
 京極さんは「妖怪」という概念を語る上で、この「豆腐小僧」を最も分かりやすい例として、様々な場所で挙げられてきました。
 そもそも豆腐小僧というのは、江戸時代の黄表紙(今風に言えば挿絵付き娯楽小説)の中に見られるキャラクターであって、実際に何か伝承があるわけではありません。「体にカビを生やす」という解説は、実は昭和の児童書の中で創作されたものだった――というのが真相だったりします。
 じゃあ本来はどんな妖怪かと言えば……単に「豆腐を持っている小僧姿の化け物」としか解説しようがないんです。
 豆腐小僧は、江戸時代当時は人気のキャラクターだったようで、様々な作品に登場していました。しかし共通項と言えば、上記の「豆腐を持っている小僧姿の化け物」という一点のみ。作品によっては目が一つだったり見越し入道の息子だったりと、特殊なステータスがあったりもしますが、そこは豆腐小僧の本質ではないんですね。
 豆腐を持って立っている――。豆腐小僧にはこの特徴しかないし、この特徴がなければ豆腐小僧じゃない。そして、この特徴さえあれば豆腐小僧は豆腐小僧たり得る。それが「豆腐小僧」という妖怪なのです。

 ……だんだん豆腐小僧がゲシュタルト崩壊気味になってきましたが。
 ともあれ、こうした京極夏彦さんの解説が広まると、各種妖怪本における「豆腐小僧」の扱いも変わっていくようになりました。
 それまでのスタンダードだった「カビ」という特徴の採用率が下がり、「豆腐を持っているだけ」という特徴がクローズアップされるようになったのです。ですから、妖怪に親しみ出したのが2000年代に入ってからという方ほど、前者よりも後者のような、「豆腐小僧=無害キャラ」という位置づけがしっくり来るのではないでしょうか。
 そして、今回の第六期版豆腐小僧もまた、まさにこの2000年代以降の特徴を採用したものだった――というわけです。

 自らのアイデンティティーを「豆腐を運ぶだけの妖怪」と語る豆腐小僧。一見無意味ながらも自分を卑下することのない彼と出会った、地味なアイドル・ニッケルカナは、自分自身の「意味」を見つけるため、豆腐小僧とともに行動し、親交を深めていく……。
 言ってしまえば、豆腐小僧が無害だからこそ成立するストーリー。さすがにそんなところへ、原作どおりに怒った豆腐小僧がカビを撒き散らかすわけにも行かないので(笑)、ここは「妖怪カビ」なるアニメオリジナル妖怪(?)&ねずみ男にご登場いただいた――といったところでしょうね。
 タイトルが「豆腐小僧のカビパンデミック」なので、いかにも豆腐小僧が何かやらかしそうでしたが……まあ、ここは原作の名残でしょう。

 話自体はギャグ寄りかつ緩やかで、第六期としてはおとなしめ。
 数少ない原作要素の一つだった天井嘗めが、いい味を出していました。
 第二話でちょっと出たテキトーな名前のアイドルがここへ来てフィーチャーされたのは驚きましたが(笑)、そういえばチャラトミさんも同じような感じで主役になりましたし、今後もそういう意外な人間キャラの再登場はありそうですね。
 ……再登場と言えば、チラリとだけ出ていた夏美さん。ご健在で何よりです。


 ということで今回はここまで。
 次回はいよいよ「血戦小笠原」かな……と思っていたら、そうか、ここで四将に戻るのか。
 はい、黒坊主です。果たして原作要素は残っているのでしょうか。
 ではまた!

テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
ジャンル : アニメ・コミック

tag : ゲゲゲの鬼太郎 水木しげる 妖怪 アニメ

ゲゲゲの鬼太郎第6期・第60話『漆黒の冷気 妖怪ぶるぶる』 感想

 今回の原作は「峠の妖怪」。ぶるぶるが登場するエピソードです。
 目玉おやじがぶるぶるを解説するシーンで用いられた、車が襲われるイメージ映像が、ちょうど原作冒頭のコマを再現したものでした。擬音も運転手の顔もそのままでしたね。
 シナリオそのものはオネショタ回裕太の成長物語としてまとめられていましたが、体内に入ったぶるぶるを風呂に入って追い出すなど、要所要所で原作をなぞる形になっておりました。

 ちなみに、ぶるぶるを追い出すために風呂に入る役回りは、原作ではねずみ男が担当していました。
 そもそも体内にぶるぶるが入った理由が、「毛針で木に磔になっていたぶるぶるを干物と間違えて食べたから」。この辺がいかにも水木テイストですね。
 なお第三期では、ぶるぶるを食べ物と勘違いしたねずみ男が、それを鍋にしてユメコちゃんに食べさせてしまい、ユメコちゃんが入浴する――という展開でした。もちろん脱ぎます。裕太君も脱ぐべきでした。

 一方で裕太君は、ぶるぶるを挑発して自分に向かわせた結果の体内侵入。しかし自らかけ流しを浴びてぶるぶるに対抗するなど、何かと勇気を示す形で困難を乗り切りました。
 ただ、もともとぶるぶるは「人の恐怖心を煽る妖怪」なので、今回「臆病な子供」の象徴として描かれた裕太君には、できれば肉体的なダメージよりも精神的なダメージに立ち向かう形で勇気を示してほしかった……と思うわけです。
 まあ、ここは入浴展開との兼ね合いもあったので、難しかったのかもしれませんが――。今回の裕太君の「勇気」が、無茶と紙一重に近いものだったのは、やはり気になった部分でした。

 一方良かった点としては、まず夜のキャンプ場の不気味さがよく表れていたこと。
 それから、妖怪メガネを利用することで、鬼太郎の左顔をさりげなく露出させる演出。
 まなねえちゃんのハグ。
 ……今回は全体的に平常運転だったこともあって、概ねこんなところでしょうか。 

 余談ですが、ぶるぶるが臆病神とも呼ばれる――という設定は、原典である鳥山石燕の絵に由来するものです。
 ちなみに石燕は、後神についても「臆病神につきたる神也」と解説しています。なので、前回登場した後神と今回のぶるぶるは、ある意味で似た系統の妖怪ということになりますね。どちらも石燕のオリジナルですし。
 まあ、本当にただそれだけの、完全な余談でした。


 ということで、今回はここまで。
 来週は「豆腐小僧」。
 キャラクターとしてはすでに何度か登場済みの妖怪なので、ストーリーがどの程度原作をなぞるのかは未知数ですが、第六期のブラックアイドル(?)こと電池組も絡むみたいなので、だいぶオリジナル色が強くなりそうです。
 ではまた!

テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
ジャンル : アニメ・コミック

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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第59話『女妖怪・後神との約束』 感想

 すっかりギリギリ更新が癖になってしまいましたが……。

 今回の原作は「後神」。二期を除く全シーズンでアニメ化されてきた定番エピソードです。
 後神というキャラクターの外見や、原典(石燕)にある「忽然と背後にいる」という特徴、そして家族全員の失踪というシナリオ――と、だいぶホラー要素が揃っている本作。しかし原作自体は案外あっさりした「いつもの鬼太郎」で、むしろホラー描写を発揮してきたのは歴代アニメ版の方と言えるでしょう。
 で、今回の第六期バージョンは、そんな歴代「後神」の中でも、最もホラーに力を入れた回となっていました。

 二週間置きに発生する、連続一家失踪事件。被害に遭った家に共通するのは、「飛行場が見える」ことと、正体不明の「サボテン」――。
 事件を追う鬼太郎。一方、犯人である後神の魔の手は、まなの友達であるみやびに迫っていた……。

 ……ってことで、またも失踪する羽目になったみやびちゃん(公式サイトでは「雅」に改まってますね)。
 木の子の時と違って、妖怪サボテンに食われるという、だいぶ災難な失踪パターンでした。今後も素敵な失踪を期待しています。←するなよ

 そんなみやびちゃんはさて置き(酷)、今回の見所は、やはり「後神」をサイコホラーとしてアレンジした点でしょう。
 シナリオの直接のベースになったのは、間違いなく第三期の「宵待ち草の後神」ですね。後神が男と暮らすために他人の家を乗っ取り、そこで来るはずのない男を待ち続ける……。これを悲恋物語として描いたのが第三期で、ゴリゴリのサイコホラーにしたのが第6期というわけです。
 脚本家のかたのツイッターを見ると、どうやら他にも各シーズンの要素が取り入れられていたようですね。僕はあいにくそこまでは見抜けませんでした(さすがにうろ覚えだしね)が、ちゃっかり原作の「釘打ち」をやらかそうとしていたのだけは気づきました(笑)。
 原作どおり……と言えば、サボテンを内側から指鉄砲で破壊するのも原作どおりですね。指鉄砲がレギュラー化してくれたおかげだと思います。

 ちなみに散々「サイコホラー」と書いていますが、果たして妖怪の奇行を「サイコ」と表現していいものかどうか。自分でもよく分かりません。
 ただ少なくとも、今回公式で煽っていた「ジャパニーズホラー」とは、また違う気がします。そもそもあの言葉は、まともな定義なんかなくて、日本でホラーブームが起きた時に、みんなで何となく使っていただけですしね。
 ……とは言え、今回の話自体を腐すわけではなく。「二週間経っても男が戻ってこないから、家を間違えたと思って、条件の合う他の家へ移る。そこにすでに住人がいれば排除する」という後神の犯行動機は、狂気の中にきちんとした整合性があって(だからこそ狂気として成立していて)、とても納得の行くものでした。いや、純粋に面白かったです。

 そして、女を誑かし続けてきた結婚詐欺師に訪れる、恐ろしい結末――。妥当な終わり方ですね。ただ個人的には、ここはもっと恐ろしい演出にしてもよかったと思います。
 さすがに真っ昼間のザ・パンティパリティだし、怖さは薄れたなぁって(笑)。


 そんなわけで、今回はここまで。
 次回は――「峠の妖怪」ですね。
 後神からの震々って……これは原典繋がりなのか?
 ではまた!

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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第58話『半魚人のかまぼこ奇談』 感想

 今回の原作は「かまぼこ」。そのタイトルどおり、鬼太郎がかまぼこにされてしまうエピソードとして有名です。
 個人的なことで恐縮ですが、実は以前角川つばさ文庫で「鬼太郎」のノベライズを担当させていただいた時に、自分から「これをやらせてください」とお願いして選んだエピソードの一つが、この「かまぼこ」でした。鬼太郎がかまぼこになるというシュールさや、人間になった半魚人の悲壮な末路など、水木テイストが抜群に溢れる短編だったので、ぜひとも手掛けたかったのです。
 そういう意味でも、この「かまぼこ」は結構思い出深いエピソードだったりします。

 で、今回の第六期版。意外にも、と言うべきでしょうね。何と、ほぼ原作ベースの展開でした。
 もちろん各所に現代的な視点が入ったり、要素が省略されたり……といった改変はありましたが、概ね原作どおり。鬼太郎がイカにされ、かまぼこにされ、それが市場に出回り、妖怪達が買い占め、復活した鬼太郎がメイドに化けて半魚人を騙し、その半魚人が人間になって苦しむ――。
 実のところ第六期のエピソードで、ここまできちんと原作の展開をなぞった回は、かなり稀。いや、さすがに女装鬼太郎は出ないかなと思っていましたが、そこもしっかり押さえてくれて、僕としてはかなり満足です(笑)。
 ちなみに過去のアニメ版を振り返ってみると、そもそも鬼太郎がかまぼこになったのは二期のみですからね。三期は「人間の娘に恋してしまった半魚人」という、違う方向性の作風でしたし、四期は半魚人自体がぬらりひょんの添え物だったので、久々に原作に近い「かまぼこ」をやってくれたな~といった感じです。

 そんな中で、原作になかった要素をいくつか拾っていくと――。

 まず冒頭の閉鎖的で不気味な漁村。これはアレですかね。半魚人繋がりで、ラブクラフト的なネタってことでしょうかね(笑)。
 ちなみに実際の伝承では、日本に半魚人という妖怪はいません。人魚なら、UMA的なものがいっぱい記録に残っています。原作の半魚人のデザインも、そんな人魚の一種と思しき「海童(うみわらわ)」という妖怪の絵が参考になっています。
 なお海童は、水木先生の妖怪図鑑にある「海女房」のデザインのベースにもなっています。

 で、そんな半魚人が使う「深海妖術」。これもアニメオリジナル。
 鬼太郎とイカを融合したり、相手を爆発させたり……と、結構何でもござれな代物でした。しかしこれ、普通に強いのでは(笑)。
 いや、たぶん第六期に登場した妖怪の能力の中でも、かなり強力な部類だと思うんですけどね。そこは敢えてスルーする登場人物達。シュール回じゃよくあること……なのか?

 それから、実は大金持ちだった砂かけ婆。ってか、億以上かい(笑)。
 タックス・ヘイヴン……。妖怪は果たして税金を払う必要があるのか。少なくとも原作「かまぼこ」では、半魚人は妖怪ってだけで免税されていましたが、果たして。

 あと、ねずみ男のバイトテロ。第六期はSNSネタが多いですが、これもその一つですね。
 ネット絡みで言えば、鬼太郎かまぼこをネット通販限定商品にしたのも新しいところです。「一度市場に出たかまぼこを妖怪が買い占める」という展開を無理なく処理するため……かどうかは分かりませんが。
 ……いや、いくら高級品でも、むしろ先に買われるリスクの方が高くなるような気もします。どうなんでしょう(笑)。

 そして、こちらはむしろ原作ネタなのですが――恐山にあった幽霊みたいな道しるべ。
 これは原作版「吸血鬼エリート」の恐山のシーンに出てきたやつですね。

 最後に、半魚人の末路について。
 アニメ版では、「人間は金があれば幸福だが、金がなくなれば不幸になる」というテーマを設け、倒産した半魚人が海で釣りをして飢えを凌ぐ生活に戻るという、皮肉なオチになっていました。
 途中、電車にはねられそうになる描写があったため、ダークな終わり方になるかと思いましたが、ラストは敢えてコメディタッチ。ちょうどいい匙加減だったと思います。
 一方原作では、「人間はそもそも寿命がある時点で不幸である」と、もはや人間全否定の終わり方。僕自身は、この身も蓋もない感じが結構好きなので(笑)、アニメ版でも生かしてくれると嬉しかったのですが、残念ながらこちらの要素はオミットされてしまいました。

 以上、ちょっとした小ネタの数々でした。
 ともあれ第六期版「かまぼこ」、なかなか楽しめる仕上がりだったと思います。


 さて次回は、「後神」ですね。
 みやびちゃん再び失踪なるか。 ←そのうち失踪キャラ化しそう
 ではまた!


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