解題「マキゾエホリック」 第五回

 勇者御一行様が一つのクラスに何組あったところで――いや、もっと言えば、全員がそんなやつらだったところで、まったく問題ないのではなかろうか。

 そう考えたのも束の間、私はそれを否定した。勇者が何組もいれば、例えば倒すべき魔王が一人なら、どうしたって彼らは絡み合わざるを得ない。じゃあいっそのこと魔王を複数用意するか。いや、それも無茶な考えだろう。
 ……と、ここで済むなら話は終わりだ。だが、現実にはそうならなかった。
 私はさらに考えた。「全員が勇者という『同一ジャンル』だから問題なのだ。彼らが相互に関わらないようにするためには、全員の『ジャンル』をバラバラにしてしまえばいい」と。


 さて、現代の日本で創られるフィクション作品の中には、当然ながら、現代の日本を舞台にしたものがいくらもある。しかしこれらの作品は、「クロスオーバー」と称される特殊な例を除き、一点に交わることはない(もちろん著作権の問題は置いておくとして、だ)。
 しかし、これも考えてみれば当たり前だ。例えばバトル物を一つ取っても、主人公や敵の力の出所は(武器やら魔法やら超能力やら)バラバラである。だから各々の世界観において、「実在する」という設定以外の空想武力は切り捨てられることになる。加えて雰囲気の問題もある。人が死にまくるようなハードな物語は、普通はほのぼの系と相性が悪いだろう。
 だが――あいにくこの常識は、すでに私の中で揺らぎ始めていた。
 なぜなら前回説明したとおり、「人生は重ならない」からだ。青森でハードな巨大ロボットアクションが繰り広げられている最中、熊本で魔法少女がほのぼのと町を守っていたとしても、二人が関わらないのであれば、何の問題もない。たとえ何かの間違いで、そのロボット乗りと魔法少女が、「たまたま同じ学校の同じクラスになってしまった」としても、だ。

 この論理に突き動かされ、私がテキストに書き起こしたもの。それは小説のプロットではなく、架空の「クラス名簿」だった。
 男子十六名。女子十六名。決まり事として、極力ジャンルを統一させないことに注意し、漫画、アニメ、ライトノベルに限らず、対象読者(あるいは視聴者)を考慮しない様々な娯楽フィクションから、「よくあるキャラクター」を引っ張ってきた。
 主役級のみならず、相方向けのものや敵役も入れた。その気になれば、このクラスの面子だけでどんなストーリーでも展開できるような、役者の揃ったものを目指した。まあ、どのみち彼らは関わらないのだけど。
 加えてパロディ性の高さを考慮し、いかにもライトノベルらしい変てこな名前を、全員に付けてやった。また「ロボット乗り」なら、「そのロボットは機械ではなく生体兵器である」という具合に、各自の(精神構造以外の)設定も多少捻ることにした。もちろん、いかにもライトノベルらしくするためである。

 ただ、この中には、本来プロットにいたはずの「主人公」は存在しなかった。なぜなら、この名簿作成自体が、私にとって「遊び」のようなものだったからだ。
 こんな馬鹿馬鹿しい名簿など、いったいどんな作品に使うのだ、と本気で思った。ならばストーリーの進行役など、用意する必要もない。
 そう思い、私はこの名簿が記されたテキストファイルを、フォルダの奥底にしまい込んだ。


 このファイルが二度目に開かれるのは――、そしてこの馬鹿馬鹿しい名簿に、「灘英斗」と「高浪藍子」という新たな生徒の名が加わるのは、それから半年ほど過ぎた、二〇〇四年の初秋のことである。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : マキゾエホリック

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