逆転裁判

 映画館が1000円の日だったので、『逆転裁判』を見てまいりました。
 特に前情報は仕入れていなかったものの、スチールを見る限りでは、お金をかけたコスプレ大会みたいな印象。もっとも、漫画・ゲームの実写化は大抵そうなるのが常なので、そこは割り切っておくこととします。さて、肝心の感想ですが……。

(以下、ややネタバレあり。あと、かなり原作ファン目線)
 

 まずストーリーですが、大筋自体はゲームの第一作目を、ほぼそのままなぞっていました。なので、『逆裁』の映画化である――という基本は間違いなく守られています。
 ただですね。正直に言うと、「これじゃない」感が非常に強い。詳しく書いていきます。


 一つ目は、キャラクターについて。
 もともと逆裁シリーズは、キャラクター同士の会話を楽しむ要素が非常に強いため、やはり映画化に際しては、「あのキャラクター達をどれだけ再現できるか」が重要ではなかったかと思うのです。
 一応言っておきますと、劇中に登場するコスプレ衣装の数々はほぼすべてが、非常にレベルの高いものでした。特に冒頭で登場する「あの」犯人二人の再現度合いはなかなかのもの。この時点で一ファンとしては、いいツカミを感じたわけです。
 ただ、問題はその後。メインキャラクターが出揃うに連れて、「このキャラは違うな」と思えるものがちらほらと目立ってきます。

 御剣検事。ひたすらクールでした。相手を追い詰める時のふてぶてしい態度や、逆に追い詰められた時の面白い顔なんかは見られず、いつでもどこでもクールのみ。おかげで御剣本来の持つ親しみやすさが、だいぶ薄れているように感じられました。
 真宵ちゃん。外見年齢……は、まあ、百歩譲るとしても、この子は華麗にピアノを演奏したりしないでしょう。そもそも原作にあった人懐っこさがほとんど見られず、魅力がだいぶ薄れていたのが頂けない。
 糸鋸刑事。役者さんの外見が完全にミスキャスト。この人はもっとむさくないといかんと思うわけです。
 裁判長。原作では人間味溢れるいいキャラだったのに、どうしてこう、妙な性格にされてしまったのか。
 狩魔検事。序盤からキャラ付けが改変されていると感じたものの、いざ裁判が始まればなかなかの強敵ぶりで一安心。しかしクライマックスで……。何だこれ。
 タイホくん。中の人がいてこそなのに。
 
 とりあえず気になったのはこの辺。逆に大幅な改変を受けながらも「まあいいかな」と思えたのは、中盤に登場する小中大ぐらいでした。もっともこの許容は、原作にある小中のキャラ設定が、今回の脚本を成り立たせる上で非常に不自然になってしまうから(原作の小中は、誰かの傀儡になるような男ではないはず)。だからまあ、完全に別人にしてしまったのは正解ではないかな、と。
 もっとも、最初からオリジナルキャラクターでもよかったはずなんですがね。「千尋を殺す犯人は、小中という名前でなければならない」なんて縛りを設ける必要はないんですから。


 二つ目、演出について。
 正直に言いますと、「キャラクターが原作と異なる」という事態は、実写版の宿命だと思って半分諦めていました。だからこそ、映画化の際に絶対に守ってほしいのは演出面。要するに、今回の映画版がきちんと原作『逆転裁判』の空気感を伴ってくれれば、まあ、許せはしたのです。
 ところが、これが非常によろしくなかった。はっきり言って「陰」なんですよね、映画版は。
 そもそも原作シリーズの空気感は、「陰」か「陽」かで言えば、間違いなく「陽」です。もちろんシリアスだったりホラーだったりという「陰」の展開は頻繁に入ってきますが、それで全体を流れる「陽」が破壊されるわけではありません。原作の調査パートで流れる音楽。そしてキャラクター同士の愉快な掛け合い。法廷でのスピーディーかつ熱い攻防戦。どれも「陽」です。
 そこへ行くと劇場版は何なのか。褪せた色使いが陰。暗い法廷が陰。暗い事務所が陰。霊媒が陰。音楽が陰。死体描写が陰。裁判長が陰。頭が鳥籠で陰。タイホくんの中身が陰。
 特に霊媒描写なんか、劇場版では完全にホラーとして描かれてましたけど、おかげで後半の千尋さんがただの死霊ですよ。「見守ってくれてる師匠」って感じがまったくしない。不気味に「ナルホドくん……」とか囁かれても、恐いだけです。原作での温もりはどこに行ったのか、と。
 一応言っておきますと、原作も劇場版も、しっかりとコメディ要素を持ってはいます。ただ、方向性が明らかに違う。ある種ベタだった原作のギャグに対して、映画版はひたすらシュールギャグ。それも陰の中でギャグを並べ立てたことで、どれもが悉く滑っている。陽だからこそ楽しかった原作の掛け合いも、陰になったことで薄ら寒く感じられる。
 この監督さんには、スタイリッシュなカットや自分流のギャグに拘る以前に、まず原作の空気感をきちんと再現していただきたかった。なぜなら、それが「実写化」という仕事における宿命であり、観客が最も強く求めている部分なんですから。


 そんなわけで、一番のミスキャストが、まさかの監督自身だったというオチ。
 同じ監督が手掛けた『ウルトラマンマックス』の宇宙化け猫のエピソードなんかはとても笑えたから、期待していたんですけどねぇ……。
 
 

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

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