怪物映画レビュー 『人喰いトンネル MANEATER-TUNNEL』

原題:ABSENTIA
2010年・アメリカ

 七年前に行方不明になった夫の幻影に悩まされる姉を見舞い、彼女の家を訪れた妹。姉はすでに新しい恋人ができ、お腹には赤ん坊を身ごもっていた。夫は失踪宣告が為され、死亡証明も発行される。だがそれに反し、姉は情緒不安定に陥っていく。
 彼女の幸せを願う妹は、朝のジョギング中に近所のトンネルで、奇妙な男に出会う。一見浮浪者のように思える男は、妹に向かって言う。
「お願いだ。交換だ……」
 そう言って自分の懐中時計に手をかける男。彼が物乞いだと早合点した妹は、その申し出を無視して一度家に帰ると、とりあえ食事の残りを持って行ってトンネルの前に置く。
 だがそれ以来、不可解なことが起こるようになった。何者かが家に貴金属の山を置いていくのだ。最初は家の前に。それをトンネルに戻すと、今度は部屋のベッドの中に……。果たしてただの泥棒の仕業なのか。しかも次にトンネルから戻ってきたのは、行方不明になっていたはずの姉の夫で……。


 何やら凄まじい邦題が付けられてしまった本作。ご丁寧に"MANEATER-TUNNEL"なんて無茶な英語タイトルまで添えられてしまっていますが、中身はなかなか不気味な仕上がりの、正統派ホラー作品です。
 ストーリーの方は本当に予測不能。いや、このキャッチコピーって割と大安売りされていますが、この映画に限っては本当に予測不能。
 序盤は姉が見る夫の幻覚でゴーストストーリーを演出。もう何度もしつこく出てくるんで、ついには姉の方も割り切って無視しようとしたら、これが実はその時だけ本物。当然大騒ぎになるんだけど、ちょっとしたらこの夫がまた消えてしまう。で、これだけで心がボロボロになる姉妹。
 この辺の人間ドラマがなかなか秀逸だと思います。いなくなっていた夫が現れてまた消えた。要は、-1+1-1=-1だから、始めの状態に戻っただけなのに、「一度出てきてまた消える」が挟まっただけで、人間関係がどんどんぶっ壊れていく壮絶さが堪りません。
 でもってストーリーが進むにつれて、妹がある仮説を立てます。例のトンネルには魔物が潜んでいて、人間を地下世界さらっては奴隷にしているのではないか――と。しかもその魔物ってのが虫。なんとビックリ、実は昆虫ホラーですよ。
 まあ、ここまでベタな真相を見せつけておきながら、あくまで超自然的ではなく現実的な事件にも解釈できるという逃げ道が用意されてるのは、お約束と言えばお約束。それよりも、深く言及されず曖昧なままで終わった「交換」の方が、考える余地がたっぷりあって面白いわけです。
 たぶん、魔物が奪ったものを返してもらうには、代わりの「何か」を差し出さなければならない。で、食料に対して貴金属が戻ってきたということは、人を返してもらうには、やはり生きたものを与える必要がある。だから最初、妹が男から求められた「交換」とは、「俺は帰りたいから、お前が代わりに魔物に捕まってくれ」という意味合いだったと考えられます。
 ただしこの交換レートでは、一人差し出すごとに一人だけしか返してもらえない。つまりラスト、消えた姉を連れ戻すために妹が自分を差し出した時、帰ってきたのは……まあ、やっぱり「アレ」なんでしょうねぇ。
 もっともこの「交換」の法則性が全編を縛っているかというと、そこのところはよく分かりません。そもそもなぜ夫は帰って来られたのか。妹が貴金属を受け取らなかったから? そして夫がまた魔物に連れ戻されたことで、別の男が死体となって帰ってきた?
 ……当たってそうでもあり、外れてそうでもあり。この釈然としない感じも含めて、いい意味で作品の余韻に浸れているのだと思いました。はい。

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

tag : モンスター 映画

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