『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第4回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第4回になります。
 第1章-3。
 勇輝の前に現れた、自称「神」。そいつは、紗耶香が四十八時間以内に死ぬと予言した。
 紗耶香の死を防ぐためには、勇輝が並行宇宙へ行き、そこで発生する「もう一人の紗耶香」の死を、回避しなければならないらしい……。

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

 突飛な話だった。常識で考えて、誰かのいたずらのはずだ。この「神」らしからぬコスプレも含めて……。
「だいたい、どうして僕なんだよ」
『簡単なことだ。君には、それができる力がある』
「あるわけないだろ。こんな名前でアレだけど、僕はただの高校生だ」
『……それに君には、天永紗耶香を助けたいと願う理由がある』
 僕の声を無視して、神は言い切った。
 理由? それってまさか……。
『――君が天永紗耶香の死を回避した暁には、君と彼女を恋人同士にしてあげよう。どうだね?』
 いや、どうだねと言われても……。
 僕は答えに窮した。そもそも僕は、紗耶香に恋しているわけじゃない。
 だから、紗耶香を助けにいく理由なんてない。
 ……薄情だなんて思わないでほしい。そもそも並行宇宙とか紗耶香の死とか、それ自体がただの世迷言なんだから、薄情もへったくれもない。
 ただ――なぜだろう。この話、妙に心に響くものがある。

「……どうしてもって言うなら、まず僕を並行宇宙へ行かせてみせろ。そしたら真剣に検討するよ」
 僕は、あくまで斜めに構えながら、そう答えてやった。
 もちろんこんな話を信じているわけじゃない。しかし、このまま乗っかったらどんなことになるのか……少し興味があった。
 さすがに本当に何かが起こるってことはないだろう。でも、ちょっとぐらいは愉快な出来事が待っているかもしれない。
 ……そんなことを考える僕に、神はあくまで真面目に答えた。
『無駄な転送をおこなうわけにはいかない。もし君が望むなら、あくまでぶっつけ本番という形で、君を並行宇宙へ送ることになる。時刻は明日の午前七時三十分からだ。……構わないか?』
「……構わない。まあ、やれるものならやってみろって話だ」
 あくまで、お遊びで乗ってやっただけなんだぞと、常識的な態度で頷きつつ――。
 それだけ言い残して、僕はそそくさと神のもとを去った。

 ……ただここだけの話、僕は神の言葉に、結構本気で心を動かしつつあった。
 学校一の美少女と結ばれるなら……という下心もないわけじゃない。しかし何より、突然降って湧いたこの非日常への誘いが、僕の趣味にピッタリはまり込んでしまっていたのだ。
 そう、これはまさに、物語によくある展開だ。
「異世界へ行き、ヒロインの死を回避せよ……か」
 平凡かつ平和な世界が、大きく変わる。空想でしかなかったものが、現実になる――。
 もしそれが叶うなら、実に面白そうじゃないか。
 ……まあ、そんな馬鹿げたこと、あるわけがないけど。

   *

 そして翌朝。いつものように家で目を覚ますと、何やら妙なことが起きていた。
「勇輝、いつまで寝てるの? 遅刻するよ?」
「……あ、天永さんっ? どうしてここに?」
「天永さんって誰よ。勇輝ってば、姉の顔を忘れたの?」
 ……紗耶香が僕の姉になっていた。

 並行宇宙。それは、僕が住む世界によく似ながら、別の可能性を持った世界。
 別の可能性。例えば、天永紗耶香が僕の姉だったら――。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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