『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第5回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第5回になります。
 第2章-1。
 本当に並行宇宙へ来てしまった勇輝。そこでは、紗耶香が自分の姉になっていて……。

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

◆第2章 一番目の宇宙 僕と君は一つ屋根の下、ただし血を分けた――

 神の言葉は本当だった。気がつけば僕は、本当に並行宇宙に来てしまっていた。
 ……どうやらこの世界では、紗耶香は僕の実の姉であるらしい。
 姓は同じ大星。名は紗耶香のまま。通っている学校は同じで、ただし学年は一つ上で……。
 混乱する僕の携帯電話に、神からメッセージが入る。どういう仕組みか分からないが、いつの間にか通信用の妙なアプリをインストールされていたようだ。
『天永紗耶香が死亡する五時間前に、君を転送した。しかし、私はこれ以外の方法で、そちらの宇宙に干渉することができない。あとは君に托そう。上手くやりたまえ』
 そんな無責任なことを言われても困る。それでなくても、急に紗耶香が近しい存在になって、焦っているというのに。
「だいたい何で姉なんだよ。こんなの突飛すぎるだろ」
『それしきのことなど、突飛ではない。並行宇宙は可能性の世界だ。元の世界とは常識がかけ離れていることなど、いくらでもある。……ともかく健闘を祈る』
 神はそう言って、一方的に通信を断った。

「どうしたの、勇輝。今日は何だか変だよ?」
 紗耶香が優しげに僕に話しかけてくる。
 この世界の彼女は、とても表情豊かで明るい。キラキラと輝いて見える。まるで元の世界とは別人だ。
「いや、何でもないんだ、天永さん」
「だから天永さんって誰? 私は紗耶香だよ。さ、や、か」
「……さ、紗耶香……」
「こら、呼び捨てるな。ちゃんと『姉さん』って付けなさい」
「さ、紗耶香姉さん……」
 紗耶香から軽く叱られながらも、僕は、初めて面と向かって紗耶香を名前で呼んだことに、胸の動揺を抑えられなかった。
 そう、こんなにも愛らしく眩しい少女と、今は一つ屋根の下――。
 今までにない新鮮な状況に、僕は少なからず、彼女に心を動かされ始めていた。
 ……姉だけどさ。

   *

 その後僕らは、二人仲良く一緒に登校した。
 どうやらこれが僕ら姉弟の日課らしい。仲睦まじいのは結構だが、おかげで僕は、学校ではシスコンと名高い。
 ちなみにそう言いふらしているのは、滝野優衣だ。
 優衣はこの世界でも僕のクラスメイト。一方、享子の方は紗耶香と同じクラスだ。つまり彼女も、僕とは学年が違うことになる。
 他にもいろいろと違いはありそうだったが……とにかく今は紗耶香の死を防がなければならない。
 一応、問題の時間までは何も起きないはずだ。しかし僕は気になって、休み時間のたびに、紗耶香の様子を窺いにいってしまう。

「……勇輝、また来たの? 今日はいったいどうしちゃったの? ……あ、もしかして私に会うのにかこつけて、本当は享子がお目当てとか?」
「え、なになに? ゆーきくん、私に恋してるの?」
「いや二人とも、そういうことはまったくないんでご心配なく……こら享子先輩、蹴るな」
 ……とまあ、いろいろと新たな誤解を生み出しつつ。
 しかし自分の教室へ戻れば、それはそれで、ややこしいやつがいるわけで。
「今日の大星弟は本当に変だな。シスコンをこじらせすぎて、そろそろ秒読みに入ってるんじゃないか?」
「何の秒読みだよ、優衣」
「おっと、卑猥なことを私に言わせる気か」
「卑猥なのかよっ」
 ……とまあ、そんな軽口は置いといて……。

 一つ気になることがあった。黒沢という教師のことだ。元の世界でもそうだが、横柄な態度が目立つ、正直嫌な部類のやつだ。
 その黒沢が、廊下ですれ違った紗耶香を、まるで舐めるような目で追っていたのだ。
 僕はそれに気づき、とてつもなく嫌な気持ちになると同時に、妙な胸騒ぎを覚えた。
 それでも、あと数時間は何事も起きないはずだ。絶対に――。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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