『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第6回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第6回になります。
 第2章-2。
 ついに紗耶香に死の危機が訪れた。しかし駆けつけた勇輝の力では、どうすることもできず……?

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

 正午を二十分ほど回った昼休み。ついに事件が起きた。
『――全校生徒の皆さん。今日のお昼の校内放送は予定を変更して、二年C組出席番号一番、天永紗耶香の断末魔の声をお聞かせします』
『――やだぁぁぁぁぁっ! 助けて勇輝ぃっ!』
 お昼の校内放送が、クラシックから突如悲鳴に切り替わった。紗耶香だ。
 そして、その前に聞こえた男の声は――黒沢だった。

 放送室に駆けつけた僕は、部屋のドアが固く閉ざされていることを知った。
 他の教師や生徒が懸命にこじ開けようとしている。だが、内側から機材で押さえてあるのか、バリケードのようになって開かない。
 中からは紗耶香と黒沢の争う物音がする。
 黒沢の吐く台詞に、猟奇的な単語が混じっている。あいつが紗耶香にしようとしていることは、もはや狂気の領域なのだ――と、僕も周りの人間達も、言葉に出さずとも理解していた。
 いや、理解したからこそ、言葉に出せなかった。
 いずれにしても長くはもたない。スピーカーから流れてくる声で、それが分かる。
『俺、この仕事始めた時から夢だったんだ。とびっきり可愛い女子生徒を、メチャクチャにしてやりたいってさ。ああ、もちろん物理的な意味でな? ……さあ、どこから切り刻んでほしい? ここか? ここ、ザックリいくか? 即死しない部位だから、ここでいいよな?』
 錯乱気味に騒ぐ黒沢の声に、僕はドアに手をかけながら悲鳴を上げる。
 開かない。開かない。開かない。早く助けなければならないのに、開かない――!
 ……その時だ。携帯電話から、神の声が流れた。

『大星勇輝。君を転送する際、君に『ある力』をリンクさせておいた。それを使って、天永紗耶香の死を回避したまえ』
 そして次の瞬間――。
 僕は「主人公」と化していた。

 銀色に染まる髪。額に生じる謎の紋章。そして何より、全身にみなぎる超人的な力――。
 まったく荒唐無稽なその変貌は、僕がノートの中に描いていた、「主人公」そのものだった。
 ノートの主人公。そう、つまり――「僕」のことだ。
 僕は突如覚醒させた力を使い、バリケードをぶち破った。
 中に紗耶香がいる。それと、彼女の胸先にナイフを押し当てている、狂気の男が。
「紗耶香っ!」
 僕は迷わず男の横面を殴り飛ばした。驚くほど簡単に、黒沢は吹っ飛んで壁に叩きつけられ、気を失った。
 急いで紗耶香を助け起こす。怪我はないようだ。彼女は僕を見て戸惑い、掠れた声を上げた。
「……勇輝?」
 その声に僕が頷く。すると紗耶香は涙を零しながら、僕にしがみついてきた。
「勇輝……。勇輝ぃっ!」
 震えながら泣きじゃくる紗耶香を抱き締め、僕は息をついた。
(――守れたんだ。紗耶香の命を、僕がこの力で……)
 描いていた空想が現実になってしまったことに、喜びと戸惑いを覚えながら、僕は紗耶香を抱き締め続けた。
 そして……。

   *
 

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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