『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第9回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第9回になります。
 第3章-2。
 勇輝は、自分が紗耶香に恋していることを、はっきりと意識し始めた。
 一方、勇輝との関係が噂になっていることを気にしている紗耶香は、彼を避けようとするが……。

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

 紗耶香はこの世界でも輝いていた。
 明るくて、表情豊かで、可愛くて――。好きになるのに充分な魅力を放っていた。
 ……いや、僕が紗耶香を好きになった理由は、それだけじゃないはずだ。
 一つ目の並行宇宙で、変に彼女と近しかったこと。二つ目のこの並行宇宙で、ある意味特殊な形で意識されていること。
 それにもっと言えば、元の世界で、僕が彼女を守るという使命を帯びてしまったこと。
 いろいろな要因が重なって、紗耶香が僕の中で大きく膨らんでいるのだ。

 ……元の世界の紗耶香も、あんな風に明るく振る舞うことがあるのだろうか。
 だとしたら、僕は見たい。
 いつも無口で、目立つのを避けるかのように陰にいる紗耶香が、明るく笑うところを――。
 ……僕は、とても見たくなっている。

   *

 この並行宇宙では、紗耶香はクラスの中心的存在だった。そりゃ、こんなに可愛くて明るい子なら、中心に来ないはずがない。
 だから、紗耶香に積極的に近づこうとしている男子も多い。できれば僕も、そんなその他大勢の男子のふりをして、彼女のそばに付いていたかったのだが……。
「大星くん、いちいち付いてこないでもらえるかな。……噂になってるから」
 紗耶香は困った顔で僕に言う。それを見て、享子や優衣がなおも囃し立てる。悪循環だ。
 しかし、いずれ僕が紗耶香を守るためには、彼女から目を離すわけにはいかない。
 ……そう言えば、例の黒沢は、この学校には教師として存在していなかった。まあ、いないに越したことはないけど……。

 放課後になって、僕は紗耶香とともに学校を出た。
「ねえ、どうして付いてくるの?」
 紗耶香が怪訝そうに訊ねてくる。僕は、すっかり不審者と化している自分の現状をどうにかしたいと思い、正直に答えた。
「……それは、紗耶香を守るためだ」
「い、いきなり名前で呼ばないでよ……」
「ごめん。ええと、天永さん……」
 いけない。つい姉を相手にしていた時の名残が出てしまった。
 一方紗耶香は恥ずかしそうにしながらも、僕の台詞に眉をひそめた。
「でも、守るって何から? ……もしかして、あのノートのお話を真似してるの? そ、そりゃ、からかわれても仕方ないとは思うけど……。うぅ、酷いよ大星くん……」
「待ってくれ、それこそ誤解だ! 天永さん、僕は本当に、君を守るために――」
 そんな言葉に合わせて、僕の頭の中に妄想ノートの物語がオーバーラップする。……それはもしかしたら、紗耶香も同じだったかもしれない。

 そして次の瞬間――。
 ひと気のない曲がり角に、僕らの行く手を阻むように、黒い影が現れた。
 手にナイフを持ったコートの男。顔は――黒沢だった。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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