『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第14回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第14回になります。
 第4章-4。
 紗耶香達が帰った後、勇輝のもとに優衣から電話がかかってきた。
 そこで優衣は、意外な事実を告げる……。

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

 それから少しして、二人は帰っていった。
 別れ際、紗耶香は僕に何か言いたそうにしていたが、結局黙ったままだった。本当におとなしい子だ。
 そして――滝野優衣から電話があったのは、その夜のことだった。
『聞いたぞ。天永の命を救ったんだってな』
「大袈裟だな。たかが自転車じゃないか」
 電話の向こうの優衣に、僕は苦笑してみせる。だが……。
『自転車? 何を言ってるんだ。相手はトラックだぞ。大事故じゃないか』
「……トラックだって?」
 僕は思わず訊ね返した。神が僕に語ったことが、事実と食い違っているのだ。

 ……優衣の話によれば、この世界で起きたのは自転車の衝突などではなく、やはりトラックの暴走事故だった。
 僕はトラックから紗耶香を守るため、彼女を抱きかかえて思いっきりダイブしたらしい。おかげで事無きを得たが、その代わり足を挫いた……。
『ショックで記憶が混乱しているのか? まあいい。嘘だと思うなら、ニュースでも何でも確かめてみろ』
 優衣はそう言って電話を切った。

 ……話は事実だった。ネットのニュース記事には、今日の午後に起きたというトラックの暴走事故のことが、克明に記されていた。『高校生カップル・危機一髪』という、ささやかな煽り文句とともに……。
 これは、どういうことだろう。
「変だ。あいつが言ったことと食い違っている……」
 神は、ただの自転車の事故だと言っていた。しかしこれでは、まるで深刻さが違う。
 ……いや、そもそもあいつは、信じるべき相手ではないのだ。
 見た目が胡散臭い。話し方も胡散臭い。僕があいつを受け入れている理由は、「転送装置と死の予言が本物だから」という、この一点だけだ。
 それにあいつは、僕が紗耶香の心に干渉することを、拒んでもいる。しかし……そこに明確な理由はあったか?
 ――神は信用できない。
 僕の中で、あいつへの不信感が、強く固まり始めていた。

   *

 翌日、僕は学校の屋上で神と会った。もちろん四度目のミッションのためだ。
 しかしその前に、僕は確かめておきたかった。
「……なあ、お前は何者なんだ?」
『神だ』
「そんなもの、始めから信じちゃいない。どう見たって、お前は誰かの変装だ」
『……私は、並行宇宙における事象の伝播を観測することで、これから先に待つ天永紗耶香の運命を把握している。また転送装置の働きによって、その運命を変えることさえできる。故に、私は神に等しいと言える』
「その喋り方も何とかしろ。どうせ演技だろ。肩が凝りそうだ。……で、お前の目的は?」
『天永紗耶香の死を回避することだ』
「だったら僕じゃなくて、おまえが助けにいけばいいだろ」
『不可能だ』
「……なぜ?」
『失敗した時のリスクが大きすぎる。天永紗耶香を救える者が、完全にいなくなってしまう』
「じゃあ僕ならいいのかよ!」
 僕は苛立ちから思わず叫んでいた。
 自分の招いた結果とはいえ、トラックに轢き殺されかけたという事実が、少なからず僕の中に恐怖心を呼び起こしていた。

『……すまない。だが大星勇輝、君以外に適任な人物がいないのだ』
 能力を使えること。それに加えて、「紗耶香を守りたい」という明確な意志があること――。
 その二つがあったからこそ、神は僕を選んだのだと言う。
 ……僕は黙った。確かに今となっては、そこに言い返す余地はない。
『では、最後のミッションを開始する。天永紗耶香の死は、例によって五時間後に訪れる。健闘を祈る』
 転送装置が僕に向けられた。
 僕は、ぶつけ切れなかった感情を抱えながら、最後の並行宇宙へと送られていった。

   *

 そして――転送に伴う軽い眩暈から、いつものように意識を取り戻した時。
 そう、僕が新たな並行宇宙を訪れた、この瞬間――。
 僕は思わず息を呑んだ。

 僕の目の前には、滅び荒んだ瓦礫の町が、どこまでも広がっていた。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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