『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第15回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第15回になります。
 第5章-1。
 勇輝が訪れた最後の並行宇宙。
 そこは、謎の敵によってすべてが壊滅した、絶望の世界だった……。

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

◆第5章 四番目の宇宙 あまりに哀しい君を、僕は命を懸けて――

 破滅した世界――。それが、僕が訪れた最後の並行宇宙だった。
 瓦礫と廃墟に満ちた町。嫌味なほど青く晴れた空の上には、雲よりも巨大な白い「何か」が、ぽっかりと浮かんでいる。
 平たく、丸く、円盤状の――。喩えが分からない。無難な言い方をするなら、それは「人工物」に見えた。
 思わず握り締めようとした手に違和感があった。見れば、僕の手には小さな機械が収まっていた。
 四角くて平たいそれは、表面にモニターが張り付けられている。タブレットのようなものだ。
 神が用意した通信手段だろうか。だがそれを確かめようとしたところで、ふと背後から声をかけられた。
「ミッションの時間だよ、ゆーきくん」
 僕が振り向くと、そこには深山享子が立っていた。

 僕が享子に手を引かれて入ったのは、地下シェルターの中に作られた研究施設だった。
「人類が『やつら』の手に落ちて一年……。でも、今日でそれも終わりだね。すべて、ゆーきくんが持ってるソレにかかってるからね。健闘を祈るよ」
 そう言って享子は、僕の手にある機械に触れ、起動させた。
 モニターの中に、一人の少女の姿が浮かび上がった。
 ……紗耶香だ。
 人類を「やつら」の手から取り戻す鍵となる、ある特殊なプログラム――。その運用をサポートするために作られた人工知能こそ、この世界の天永紗耶香だった。
『よろしくね、勇輝』
 モニターの中で、紗耶香の姿をしたAIは、僕に向かってにっこりと微笑んだ。

 この並行宇宙で僕に課せられているミッションとは、こうだ。
 享子から托された紗耶香(プログラム)を、目的の場所まで無事送り届け、起動させること――。
 ただし地上には「やつら」の仲間が徘徊している。そして、「やつら」は紗耶香を狙っている。絶対に捕捉されてはならない。
「もし見つかっても、私達の武装では『やつら』に勝てない。だから全力で逃げ切ること。……これはそのために用意したの。着用して?」
 享子がそう言って運んできたのは、一着のパワードスーツだった。
「これはいったい……?」
「パパが作ったの」
 享子の父親は科学者だった。かつて、この地球に「やつら」が降り立つことを予測したものの、誰にも信用されず、それが元で学会を去ったという。
 それから何年もかけて、彼はこのスーツと「天永紗耶香」を作ったそうだ。
 すべては、空に浮かぶ「やつら」の船を――通常の攻撃手段では決して落とすことのできない敵の母船を、この地球から葬り去るために……。
「このスーツは、あくまで機動力を高めるためのもの。戦闘面では何のサポートもできないから、注意してね?」
 そう説明を受けながら、僕はスーツを着込んだ。
 体のあちこちに、ジェットユニットが取り付けられている。その気になれば空さえ飛べるというが、あくまで僕に求められているのは、隠密行動だ。
(それにしたって、この姿は……)
 鏡の前に立った瞬間、僕は理由の分からない戦慄を覚えた。
 全身を覆う金属のスーツ。表情さえ隠す、フルフェイスのヘルメット――。
 ……そう、今の僕の姿は、「神」そのものだった。

 ここは、侵略者によって壊滅した世界。
 あまりにも荒唐無稽な、元の世界とはかけ離れた――しかし可能性の一つとして、確かに存在しなければならない世界。
 天永紗耶香を守り、この世界を救うことが、今の僕の使命だ。
「行こう、紗耶香――」
 僕は守るべき少女を手に、施設を出た。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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