『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第17回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第17回になります。
 第5章-3。
 並行宇宙に存在する人工知能「天永紗耶香」がセットされたのは、巨大なミサイルだった。
 勇輝は彼女の運命を知る。そして……。

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

 対異生体用バイオミサイル――。「やつら」の肉体を化学的に分解する、特殊な物質を搭載しているらしい。
 確かに勝利の鍵には違いない、だけど……。
『私の役目は、このミサイルを起動させ、ターゲットまで誘導すること。……発射します。勇輝は離れて』
「ちょっと待てよ! そんなことをしたら、紗耶香、君は――」
 紗耶香がミサイル本体と直接繋がっている以上、これは自爆に等しい行為だ。
 しかし、紗耶香はそれを認めていた。
『仕方ないよ、勇輝。『やつら』はすでに、あらゆる通信手段を破壊している――。遠隔操作ができない以上、誘導プログラムである私が直接導くしかない。……大丈夫だよ。私には、命なんてないから』
 紗耶香はそう言って、明るい笑顔を浮かべた。
 その笑顔は、今までに見た並行宇宙の紗耶香達と――命ある彼女達と、何一つ変わらなかった。

「……そんなこと、させるものか!」
 僕は叫んだ。
 人類の希望は紗耶香なんかじゃない。僕がこの力で、あの船を落としてやる。今の僕ならそれができる――。
 だが僕がそう思った刹那、シェルターの扉が轟音を立てて吹き飛んだ。
 優衣が入ってきたのだ。
『……間に合ったようだな。さあ、壊してやる。そいつが発射される前に、天永紗耶香を、この私の手で木端微塵に!』
「優衣……。お前がこの世界の、紗耶香の死因だってのか? それとも――」
 僕には分からない。優衣を抑えれば、紗耶香は自ら船を撃ち落とし、死を迎える。しかし僕が船に向かえば、紗耶香はここで優衣に破壊され、やはり死を迎える――。
 どちらを防ぐのが正解なのか。
 しかし僕が迷う間に、紗耶香を搭載したミサイルが火を噴いた。
 紗耶香が打ち上げられていく。晴れ渡る青空に向かって――。

『――させるかっ!』
 そう叫んで空に舞い上がったのは、僕ではなく優衣だった。ミサイルごと紗耶香を破壊するつもりだ。
 僕もまた後を追った。ボロボロのパワードスーツに鞭打って、二人の後を追って飛び立つ。
 しかし――間に合わない!
 紗耶香の着弾よりも先に、僕が船に到達することはできない。
 優衣が紗耶香を捕らえるより先に、紗耶香が船に着弾することもできない。
 ……僕に残された選択肢は、一つしかなかった。
「やめろ、優衣っ!」
 空中で、僕は優衣に衝突した。そのまま力を覚醒させ、彼女を地上に向かって叩き落とした。
 地面に激突し、動かなくなる優衣。その時点で僕のスーツもまた限界を迎えた。
 推進力を失い、半ば落下するように、僕は地上に降りた。
 見上げると、紗耶香を載せたミサイルの影は、すっかり小さくなっていた。
 もう手が届かないほど小さく。青空の彼方へ――。

 ……その直後に起きたであろう大爆発を見ることは、僕にはできなかった。
 それよりも先に、僕は元の世界に引き戻された。

   *

 そこは夕焼けに満ちた、学校の中庭だった。辺りにひと気はない。
 僕はその中に、震えながら佇んでいた。
『おめでとう。すべてのミッションは無事遂行された。天永紗耶香の死は、回避できた』
 僕のすぐそばで、神が告げた。
 しかし僕の目は、この時、まったく別のものを捉えていた。

 僕のすぐ目の前で、頭から血を流して地面に横たわる、動かない優衣の姿を――。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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