『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第20回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第20回になります。
 第6章-3。
 世界の真実が明らかになった今、神は勇輝に語る。
 なぜ天永紗耶香の死は、回避されなければならなかったのか……。

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

「天永さんが……?」
『そう、天永紗耶香だ。君もすでに知っているはずだ。彼女が、『人類を救う鍵』だということを』
 それは、四番目の並行宇宙の話だ。
 ……だけど、この世界の話でもある。
『天永紗耶香は、深山享子の父親によって作られた。その存在を『やつら』に気づかれぬよう、兵器でありながら人間の姿に擬態させられて――。そして『やつら』の襲撃予測地点に近いこの高校に、生徒として潜入した。ただし、その使命のためにも、日頃から目立たないように振る舞う必要があった』
 なぜなら、すでに「やつら」の尖兵が、この高校に潜伏していたからだ――。神はそう説明した。
 優衣と黒沢のことだった。
 思えば、優衣が享子と親しくしていたことにも、意味があったのかもしれない。……おそらく、それと感づいて探りを入れるために。
『しかし一週間前、大きな問題が浮上した。深山享子の父親が遺した並行宇宙観測システムが、ある重大かつ深刻な事態を予測してきたのだ』
 天永紗耶香の死だ――と、神は続けた。

『偶然にも、ある四つの並行宇宙で、同時多発的に天永紗耶香の死が発生することが分かった。しかもその伝播は、この世界を直撃する。これを回避しない限り、天永紗耶香は人類を救うことができない』
「まさか……。だからお前は僕に、天永さんを――紗耶香を救わせたって言うのか……」
 一瞬の間があった。しかし直後、神はゆっくりと頷いた。
『天永紗耶香は、生き延びなければならなかったのだ』
 理由はただ一つ。……「やつら」を滅ぼすためだ。
 自らを犠牲にして、「やつら」を滅ぼすためなのだ。
「だったら紗耶香は……今まで、死ぬために、生き延びてきたってことなのかよ!」
『そうだ。四番目の並行宇宙で君も見たはずだ。君が成功させたあのミッションの結果こそが、天永紗耶香に課せられた使命だ。……今日この日の犠牲のため、天永紗耶香の『普通の死』は、絶対に回避されねばならなかったのだ』
 僕は――もはや言葉が出なかった。
 そんな僕に、神は静かに『すまない』と告げた。
『君にはすまないと思っている。これは本当だ。……天永紗耶香を救う人材として、君は最適だった。並行宇宙で力を覚醒できる。それに、君が天永紗耶香に惹かれている以上、彼女を守るという意志に揺るぎが生じることもない――。だから、私は君を利用させてもらった。君にはそれだけの価値があった』

 ……この時だ。僕がふと、大きな引っかかりを覚えたのは。
 神が僕を選んだ理由――。それは、四番目の並行宇宙へ行く直前にも聞いたことだ。それだけじゃない。最初に路地裏で会った時も、こいつは同じことを僕にほのめかしていた。
 だけど、今にして思えば……何かがおかしい。
(僕が紗耶香に、惹かれている……?)
 それは、いつのことだ?
 今は確かに惹かれている。だけど、あの時は――。
 神が僕を選び、僕の前に現れた、あの時は――。

 ……この瞬間。
 僕はすべてを理解した。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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