『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第21回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第21回になります。
 第6章-4。
 神の口から語られた、天永紗耶香の秘密。
 だが勇輝はその時、あることに気づいた……。

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

『さて、最後に君には、礼をしなければならない』
 神が僕に言った。いつもの転送装置を取り出しながら。
『君と天永紗耶香を恋人同士にする――。約束だったな』
「……紗耶香は、いなくなるんだろう?」
『それはこの世界の話だ。しかし――並行宇宙には無限の可能性がある。その中には、天永紗耶香がごく普通の少女で、君と恋に落ち、これから先も幸せに暮らしていける……そんな平凡かつ平和な世界が、可能性の一つとして確かに存在している。……だから私は、君をその世界へ転送する。永久に』
 それが、神が用意していた報酬だった。
 だけど僕は――そんなもの、認めない。
「……それで何が解決するって言うんだよ」
 僕は声を震わせながら、言い返した。
「それで僕が幸せになるとでも思ってるのかよ! 僕はこの世界の人間なんだ! 僕が守らなければならないのは……、僕が恋をして、心から守りたいと願っているのは、この世界の紗耶香なんだ!」
 そう、他のどの並行宇宙の紗耶香でもない。
 僕にとって一番大切なのは――。

「この世界の紗耶香……。そう、君なんだ……」
 僕のその言葉に、神は掲げていた転送装置を、ゆっくりと下ろした。

 フルフェイスのヘルメットが取り去られた。
 同時に中から、長い髪が流れるように溢れ出た。
「……大星くん。気づいてたんだね……」
 天永紗耶香はそう言って、僕の顔を見ずに、そっと目を伏せた。
 そう、「神」なんかじゃない。これは――紗耶香だ。
 僕がそれに気づいた理由は、彼女が「神」を演じている最中に発した、あの言葉だった。

 ――君が天永紗耶香に惹かれている以上、彼女を守るという意志に揺るぎが生じることもない……。

 でも……忘れてはいけない。これはもともと、ただの誤解だったはずだ。
 少なくとも、彼女が神と名乗って僕の前に現れた、あの時は……。
 そしてあの時、「僕が紗耶香に恋している」と思い込んでいた人間は、三人しかいない。僕のノートを見た、紗耶香も含めた三人だけしか……。

 それだけじゃない。考えてみれば、他にも思い当たることがいくつも出てくる。
 例えば、神が紗耶香の命の危機を、当の紗耶香本人には伝えていなかったこと。
 トラックを自転車だと偽り、僕に余計な恐怖心を抱かせまいとしたこと。
 三番目の並行宇宙への転送を時間ギリギリまで引き伸ばし、僕にキスを経験させなかったこと。
 天永紗耶香の感情に刺激を与えるなと言ったこと。
 そして何より、僕が元の世界と並行宇宙との間を移動した時には――、必ず僕は紗耶香と、あるいは神と、二人でいるところからスタートしていたこと。
 ……すべてに、意味があったのだ。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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