『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』第22回

 連載記事『宇宙は多元かつ並行につき、僕と君は恋をする。』の第22回になります。
 第6章-5。
 世界の真実。「神」の目的。その正体。
 すべてを知った勇輝は、紗耶香に呼びかける……。

※こちらは、拙作『リバース;エンド』の初期プロットを、簡易小説として書き改めたものです。


 * * *

「できれば、最後まで知ってほしくなかった。正体が私だってこと……」
 紗耶香はヘルメットを捨て、そう呟いた。
「どうして隠してたんだ? 妙な芝居までして」
「……最初は、大星くんを利用してるのが私だって、知られたくなかったから。もし大星くんに嫌われたら、助けてもらえなくなるって思った……」
「じゃあ、今は……?」
「今は――」
 紗耶香はそう言って、クシャリと表情を歪めた。
「……どんな顔でお別れすればいいか、分からないから」

「……逝くな、紗耶香」
 僕の言葉に、紗耶香は頷くことはなかった。
「大星くん、私は――大星くんを利用したんだよ?」
「……知ってるさ」
「私の代わりに、いっぱい危険な目に遭わせたんだよ?」
「……ああ、危ないことばかりだった」
「だったら、怒ってほしい。怒らないなら、世界を救うために私を送り出してほしい。……『逝くな』なんて、言わないでほしい」
 紗耶香が僕に目を向けた。
 その目には、いつの間にか涙が溢れ出していた。
 僕は――静かに繰り返した。
「……逝くな」

「……何でかな、大星くん。私……今すごく辛いの。大星くんと離れ離れになってしまうのが、とても辛い。……きっと、大星くんが並行宇宙を通して、私の心に干渉したからだよ」
 好きになんかなりたくなかった――と紗耶香は言った。
 僕を好きになれば、辛さを知ってしまうから。自分の身に待つ結末が「悲劇」なのだという事実を、受け入れなければならなくなってしまうから。
 でも――。

「違うよ、紗耶香」
 僕は、泣き出しそうになる表情を笑顔の形に歪めながら、そう答えた。
「好きにならない可能性なんて、どこにもなかったじゃないか。……並行宇宙の法則なんか関係ない。僕と紗耶香の気持ちが変わったのは――僕らが恋に落ちたのは、必然的に起きたこと。それでいいじゃないか」
 なぜならどの並行宇宙でも、僕らの距離は、最初からとても近かったのだから――。
 元の世界で僕らが恋に落ちないなんて可能性は、始めから存在しなかった。
「大好きだ、紗耶香――」
 僕はそう言って、機械に包まれた紗耶香の体を、強く抱き締めた。

 唇が触れた。
 先に触れてきたのは、紗耶香の方だった。
 熱く濡れた頬を摺り寄せ、僕らは固く抱き合った。
 それから――紗耶香は僕の体を離すと、濡れたままの瞳で僕に言った。
「ありがとう、大星くん。ううん、……勇輝」
 ――大好きだよ。
 そして指で涙を拭い、その瞳をキュッと細め――。

 天永紗耶香は、この世界で初めて、とびきりの笑顔で微笑んだ。
 輝くような、とても眩しい笑顔で。

   *

 少女の体が舞い上がった。
 空へ向けて。その彼方から迫る、世界の破滅をもたらす船へ向けて。
 天永紗耶香は僕を残し、地上から飛び立っていった。

 やがて巨大な爆発が、大気を揺るがせた。
 僕は地上に立ち、その光を――天永紗耶香の最期を、いつまでも見守り続けた。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : リバース;エンド 多元宇宙

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