怪物映画レビュー 『新アリゲーター 新種襲来』

原題:ALLIGATOR ALLEY
2013年・アメリカ

 沼地のそばにある小さな町で、代々争いを続けてきた二つの家――。ワニ漁とバーの経営で盛んなドウセット家と、密造酒の製造に明け暮れるロビショー家は、そこの娘(ヒロイン)と息子が『ロミオとジュリエット』よろしく、密かに愛し合っていた。だがそんな折、沼に投棄されていた出来損ないの化学添加物入り密造酒っつーかブルーハワイの汁にしか見えない真っ青な液体をワニ達が大量摂取し、突然変異を来してしまう。首元は赤くなり、尾にはステゴサウルスばりの鋭いトゲが生え、巨大・狂暴化。地元の住民を次々と襲い始めた。
 保安官からワニ一頭につき5000ドルの賞金が懸けられ、本格的にワニ狩りに乗り出す住民達。多数の犠牲を出しながらも、両家の共闘の末にワニの巣は壊滅するが、それも家同士の和解にはならない。しかも事件は解決していなかった。ワニに手を傷つけられたドウセット家の父親が包帯を解くと、そこには鱗のように硬質化した皮膚が……。
 一夜明け、消えたドウセット家の一族と、再び増え出したワニ達。唯一残されたヒロインは、父と同じ金歯をしたワニを見て、すべてを察する。そう、このワニは感染するのだ。ワニ肉を食べていた一族はすべてワニと化し、動物愛護で菜食主義の娘だけがワニ化を免れていたのだ。
 さらに、ワニに傷つけられたロビショー家の息子もまた、ワニに変貌してしまう。ヒロインを助けるため、他のワニと戦って命を落とすワニ息子。彼の父親は悲しみとともに、ワニと化したドウセット家を殲滅する作戦に打って出た。
 ヒロインもまた、一族を殺さなければならない葛藤に苦しみながらも、ロビショー家と手を組んで殲滅作戦に加わる。だが彼女は一方で、いまだ人間の意識を保っている父親を密かに助けようと考えていた。
 その頃、死んだかに思われたワニ息子もまた、沼で息を吹き返しており……。


 中盤でジジイがワニに変身した辺りから、どうしていいか分からなくなりました。

 まず開幕から沼にドバドバ垂れ流されるブルーハワイに笑いが止まらないわけです。いや、有害物質だから青くてもいいんだけど、これを劇中で事あるごとにジジイががぶ飲みしてるんですよ。口の中真っ青にしながら。しかもご丁寧に、汚染されたワニの口まで真っ青。
 さらにこの汁を不法投棄していた青年が、ヘッドホンで音楽を聴きながら作業していたせいで、間近でパックリいかれて悲鳴を上げてる地元のオッサンには気がつかず。もうこの時点で、「ああこの無能な兄ちゃんは主人公じゃないな」と思っていたら、普通にヒロインの相手役でした。
 一方ヒロインは、故郷を離れて都会で大学生ライフを送っていた女の子。彼女がワニ漁の解禁日を機に、久しぶりに故郷に帰ってきたところから、物語は始まります。
 彼女が乗っている車を運転しているのは、どうもガラの悪そうな薄汚いアンチャン。好色そうな目でヒロインを見ながら、不意に森の中で車を停める。「どうしてここで車を停めるの?」と不審げに訊ねるヒロイン。
 とそこへ突然、ヒゲモジャの熊みたいな、いかにもホラー映画で人殺してそうなジジイが車の外に現れた!

ヒロイン「お父さん!(歓喜)」

 お前の親父かよっ!
 そう、このヒゲモジャはヒロインのパパ。運転していたアンチャンは、パパの後妻の弟。なんでよりにもよって、こんなの(失礼)が主人公サイドなのかなーと思うんですが、どうやら彼らは「時代に取り残され、前に進むことのない存在」として、ヒロインにとってはやや否定的に描かれている模様。
 なるほど、言われてみれば、ジジイは良きパパでありながらも、解禁日前からワニ漁に手を出し、対立相手の土地に踏み込んで諍いを起こす、ややモラルに欠けた人。アンチャンはアンチャンでアレだし、アンチャンの姉であるパパの後妻も、パパよりタバコと犬を溺愛するやっぱりアレな人。いつも犬を抱いていて、ヒロインに「この子に(挨拶の)キスをして」とねだり、ヒロインが拒否すると根に持ってネチネチ言ってくる。まあ、こんなんじゃヒロインも嫌がって都会に逃げるよなーと納得するわけです。そもそも彼女、動物愛護に目覚めたようで、パパに向かって、「もうワニは殺さない」宣言。
 でもパパから対ワニ用のボウガンを渡されて大歓喜。しかも見ただけでボウガンのスペックを言い当てるマニア。うーん、分からん。
 そんな彼らが経営するバーは、ドウセット一族の集いの場。そこでは獲ったワニを料理して、一族総出で食べる食べる。もう口の周りを茶色いタレでベタベタにしながら、ジジイもババアもガキンチョも、モリモリムシャムシャ。でもってベタベタの口でキスしたりじゃれ合ったり。スゲー汚ぇ。ドウセット家やべぇ。
 あと、後妻がワニ肉を犬の口元に近づけるたびに、犬が嫌そうに顔を背けるのは、果たして素なのか狙っているのか。

 そんな一族はともかくとして、ストーリーは着々と進みます。両家の若い二人が愛し合ってたり、ワニが次々と犠牲者を出したり。ちなみにワニの尻尾のトゲは、弾丸みたいに飛ばせます。すごいんだか地味なんだか分からない能力です。
 そしてワニによる犠牲者の死体が発見されると、たまたま親戚だったヒロインパパはご立腹。これはロビショー家の仕業に違いないと早合点し、戦いの準備を始めてしまうお茶目さん。笑えるけど笑えねーよあんた。
 そして川のほとりで一族同士が睨み合う中、ふと水の上を見れば、そこにはボートに乗ったヒロインとロビショー息子の姿が。おいおい修羅場だなぁと思っていたら、そこへワニの群れが押し寄せてきて、ようやくみんなの誤解も解けました。
 でもって、陸地から攻めてきたワニに慌てて、川の中へ逃げていく一族ども。そっちに逃げんなよ。
 それをボートに引っ張り上げようとしたヒロインは、水に突き落とされる。ひでぇ。
 ともあれ、辛くもその場を乗り切った一同。事態を察した保安官は、ワニに賞金を懸け、さらに専門家を呼ぶことも考える。一方家に戻ったドウセット家だったが、その夜、後妻の犬が森に迷い出て、それを追った後妻がワニと出くわしてしまうという事件が。
 さっそく助けにいくドウセットの面々。そして、今までどうしようもないイメージしかなかったアンチャンの機転が、このピンチを救う!

アンチャン「よし、やつの気をそらせよう」

 そして後妻の手から犬を取り上げ、ワニに向かってポイッ!
 うわぁ、最低で最高ですねっ。
 そしてこの辺りから、パパは密かにワニ化し始めます。もう見ててワクワクしますよ、いろんな意味で。
 一夜明け、保安官の呼んだ専門家が町に到着。専門家っていうから生物学者とか凄腕のハンターかなーと思ったら、ディスカバリーチャンネルでワニと戯れてる変なオジサンでした。ちいちゃなワニを掲げて水からザバーッと出現する、ワニよりオジサンの方が迫力満点の番組オープニングカットに爆笑。でもってテレビでは有名だというこのオジサン、ワニとともに暮らし、ワニと話せるのが売りなようで、ワニと一緒になって死んだ鶏を丸齧りしたりしています。ダメじゃん。
 しかし、そうは言っても彼は専門家。昔『アベレーション2』という映画で、巨大昆虫の襲撃を受けた町が害虫駆除業者を呼んだら、CMに出てたゴーストバスターズのパロディみたいなオヤジがそのまま来て、火炎放射器や冷凍ガス、拳を武器に巨大昆虫と真っ向からぶつかり合ってくれたという実績も(何の実績だよ)この手の映画にはありますから、これは期待できるなーと思って見ていたわけですが――。
 両家とともにワニの巣へ向かった専門家と撮影クルー。ロビショー家の息子も唐突に保安官補佐に就任して同行。どんどんこの映画の方向性が分からなくなっていく中、さっそくワニの巣を発見。辺りにはブルーハワイまみれの卵も多数。
 専門家は「刺激するなよ?」と言いながら、泥沼を這っていた子ワニに向かって「ミュウ、ミュウ、ミュウ」って、おい語らってる場合かよ。
 そして専門家のパフォーマンスを無視し、容赦なく卵を狙撃し始める両家のオヤジども。そこへ怒った親ワニがやってきて、撮影クルーは全滅。
 もはや大惨事にもかかわらず、親ワニを仕留めた両家は、帰って大喜びで祝杯。もちろん報奨金もガッポリ。保安官も呑気に表彰なんかしてる場合じゃないのに。そもそも生き残った専門家のオジサンはどうしたんだと思ったら、彼はクルーの仇を討つため、森の中に一人たたずみ、単身ワニに立ち向かう決意を、自画撮りで表明していました。
 直後に食われたけどな!

 さて、こんな感じで続いてきたワニ退治のひどい話は、ここでパパが完全にワニ化したことで、急展開を見せていきます。
 川でヒロインを襲ってきたワニが、凄まじい勢いで口から煙を噴いていたことから、タバコ好きだった後妻を連想したヒロイン。いや、いくらなんでも無理矢理すぎないか? と思ったら、倒されたワニの爪はマニキュアでドピンク。
  そしてパパも金歯の生えたワニに変身。沼に落ちたヒロインを助けてくれたところから、どうやらパパにはまだ自我が残っている模様。ヒロインが「だったら殺さずに助けたい」と考えたのは、まあ、ごく自然なことでしょう。ワニを殺そうと考えるロビショー息子とは喧嘩になり、そのまま車で飛び出してしまうヒロイン。彼女が道路を走っていると、突然前方に無表情な血まみれの女がたたずむ!
 おい出る映画間違ってるぞあんた。
 でもって異変を察したヒロインが車を降りると、そこにはワニの群れに襲撃された家が! 庭には住人の一人が転がっていて、すでに事切れる寸前。しかし家の中には、まだその家族が取り残されているらしい。
 そこへワニの群れが、ヒロインに向かって迫ってくる! しかしヒロインも負けはしない。銃を手に取ると、どや顔でガスタンク目がけて発砲し、ワニどもを爆殺! あれ、ワニは一族だし殺さないんじゃなかったんですか?
 もうブレブレなヒロイン。そして爆発により、家族が取り残されているはずの家は大炎上。ヒロインは「やべぇ」と逃走。あーあ。

 その後、ロビショーの息子もワニに変身し、ヒロインを守って死亡。ロビショーが一族総出でワニの殲滅に乗り出す……ってのは、すでにあらすじで書いたとおりです。そして物語のクライマックスは、ワニと化したパパとロビショーのオヤジが、一対一の男の決闘! 荒野のガンマンよろしく、銃とトゲの早撃ちで。
 ……そうか、これがやりたくてワニにトゲなんか生やしたのか、スタッフ。
 で、両者共倒れ。残されたヒロインは他のワニを爆弾で全滅させた後、実は生きていたロビショー息子(つーかワニ)と結婚し、赤ちゃんを産んで、地元でワニ牧場を経営しながら幸せに暮らすのでした。めでたしめでたし。
 ああ、めでたしめでたしだ。誰が何と言おうとな!


 いやはや、あまりに笑えたので、ほぼ全編書いてしまいました。こういういろいろ書きたくなる作品ってのは、個人的には大当たりなんですけど、たぶんスタッフも狙って悪乗りしたんだろうなーってのは何となく伝わってくるわけです。でも楽しい。狙ったB級ってのは、波長が合わないととことん白けてしまう危険があるんですが、今回は自分の好みに上手く噛み合ってくれたようです。
 人間がワニに変身する映画といえば、だいぶ昔に『恐怖のワニ人間』なんてのがありましたが、この『新アリゲーター』も、そんな「ワニ人間もの」に連なる(いや、他にあるのか知らんけど)、新たな怪作ではないでしょうか。

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

tag : モンスター 映画

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