解題「マキゾエホリック」 第九回

 ストーリーの方向性が定まり、主人公も改まった。プロローグも書き直され、いよいよ本格的な執筆が始まったことになる。
 なお、この書き直した新たなプロローグは、ほぼ改稿なしの形で「マキゾエ」にそのまま用いられている。自分で言うのも何だが、なかなか硬派で気に入っている。このプロローグはもちろんのこと、台詞以外の地の文は、全体的に大真面目な文体で統一させることにした。
 句読点や改行は少なくし、「~である」という末尾を必要以上に多めにした(ちなみに当然だが、口語体ではない。地の文なのだし)。ライトノベルらしからぬと言われれば間違いないが、逆にここで「コメディだから」と砕けた文体を用いてしまっては、あの独特の味は出せなかった、と今でも思う。
 なぜなら、本作は内容そのものが「真剣な馬鹿」だったからだ。その真剣な馬鹿を際立たせるためには、やはり大真面目な文体がふさわしい。さらにその上で、所々の文法を狂わせ、リズムに乱れを与えたのも、意図的なものであった。


 だがこの期に及んで、私が触れてないものがある。そう、プロットだ。


 プロットとは、言わば設計図のようなものだ。実際に執筆に入る前に、ストーリーの流れを大まかに書き記したものである。そもそも長編ともなれば、行き当たりばったりだけでは成り立たないから、事前の計画は極めて重要だ。特に大人数を絡めたミステリーともなれば、なおさらである。
 だが、プロットはなかった。
 いや、正確に言えば、第一章まではあった。それから事件の核心部分、いわゆる「真相」についても、私は事前に綿密な設計図を用意している。しかし、その真相へ辿り着くまでの肝心の筋道が、ほとんど準備されていなかった。
 ここで真っ当に考えるなら、どうあれプロットを完成させてから先へ進むべきだ、ということになるのだろう。だが、私は急いていた。とにかく、今回の応募機会を逃したくなかった。だから、「書く」ことにした。
 幸い登場人物の多さに比例して、書くべきシーンはいくつも思い浮かんだ。あとはそれをいかに組み立て、事件の真相へと導いていくかだが――それは、ぶっつけ本番で決めることにした。
 実のところ、この試みが成功したとは言い難い。正直に言ってしまえば、出来上がった作品は、ミステリーとして非常に荒っぽいものであったからだ。もっとも「バカミステリー」の一環と開き直ってしまうことも可能なのだろうが、少なくとも私にとってこのプロット不在の問題は、「君等の記号/私のジケン」における、極めて重大な欠点だったと言える。


 ともあれ、そんなわけで、執筆はほぼ綱渡りの状態となった。
 実際に筆を進める上で、所詮頭で組み立てただけのものは通用しない。予定から一転、シーンの順番は次々と前後し、追加・削除も頻繁におこなわれた。「御伽学園」や「一年乙組」といった名称も、執筆段階でようやく捻り出した。
 そんな中でも一番の苦戦は、やはり「生徒を全員登場させ、事件に絡める」という決め事を、いかにクリアするかであった。
 名簿にある乙組の生徒は三十二名。これに灘と藍子が加わり、三十四名となる。まあ、無茶だ。とてもじゃないが、設計図なしで組み立てられるものではない。
 こういった場合の常套手段は一つしかない。当初の「全員出す」という考えを捨て、登場人物をクラスメイトの一部をに留めることだ。
 実際、「マキゾエ」の一巻はそうなっている。乙組生徒のうち何名かは姿を見せず、記号も伏せられたままである。だが――忘れてはいけない。「マキゾエ」はあくまで「製品版」だ、ということを。

 はっきり言おう。応募原稿である「君等の記号/私のジケン」の段階では、一年乙組の生徒は、全員登場していた。
 我ながらよくやったと思う。いろいろな意味で。

 ところで、「マキゾエ」における乙組生徒の人数は、灘と藍子を含めても三十二人である。つまり、上に挙げた数字から、二人減っている計算だ。
 なぜか。まあ、無茶の代償である。
 さすがに事件に絡めるにも限度がある。だから応募原稿の段階で、生徒が二人消えた。「出さない」のではなく、名簿から存在そのものが「抹消」されたのだ。
 全員を出すために、全体数を減らす――。本当に、我ながらよくやったと思う。いろいろな意味で。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : マキゾエホリック

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