怪物映画レビュー 『イット・フォローズ』

原題:It Follows
2014年・アメリカ

 主人公の女子学生は、付き合っている彼氏に求められ、ついに車の中で肉体関係を結ぶ。だが事が終わった直後、突然クロロホルムを嗅がされ失神。目が覚めると車椅子に縛りつけられ、廃墟の中にいた。怯える彼女に、彼氏は事情を話す。

 ――さっき肉体関係を結んだことで、「それ」が彼女に感染した。「それ」は変幻自在でどんな人間の姿にもなる。「それ」は歩いてやってくる。常に逃げ道を用意しておけ。「それ」が君を殺した時、「それ」は僕のもとに戻ってくるから……。

 そこへヒタヒタと歩き、迫ってくる人影。「それ」だ。「それ」は実体こそあるが、感染者と感染経験者の目にしか映らない。彼氏は主人公を連れて車で「それ」から逃げた後、主人公を捨てて、そのまま行方を晦ませてしまう。彼氏は名前も住所も出鱈目。最初から「それ」をなすりつけるのが目的で、主人公と交際していたのだ。
 それからというもの、主人公は「それ」の影に怯え続ける。気を抜けば「それ」は迫ってくる。さりげない日常の景色の中、遠くからこちらに向かってゆっくりと歩いてくる人影は、もしかしたら恐るべき化け物かもしれないのだ……。
 主人公は打開策を求めて、妹や幼馴染の少年とともに、逃げた彼氏を探し当てる。見つかった彼氏は、ただ一つ助かるすべを知っていた。つまり――誰か別の男と肉体関係を結ぶことだ。
 それを知った幼馴染の少年は、主人公を助けたいと申し出る。だが主人公はそれを断り、隣家に住む親しい青年と抱き合った。過去に一度、青年と肉体関係を持っていたからだ。
 こうして危機は去ったかに見えた。だが「それ」は青年のもとを訪れ、油断していた彼をあっさりと殺してしまう。感染者を殺した「それ」は、己のルールに則り、再び主人公のもとに戻ってきた……。


 得体の知れない存在が独自のルールに基づいて人を殺していく――。それだけを理由に「都市伝説ホラー」というジャンルで括ってしまうのは、果たして適切なのか……なんてことを思いながら鑑賞した本作。まずホラー映画としては、かなり良質な部類だったと思います。
 プツプツと途切れるカット。むず痒くなるような音楽。遠景の中にさりげなく配置される「それ」……。
 特に「人が歩いてくるだけで怖い」というアイデアは見事で、遠景の一つ一つが大きな意味を持ち、観客に目を背けさせるのではなく、つい凝視させてしまうような緊張感を漂わせることに成功していると感じました。
 話の中盤、逃げた彼氏の学校を突き止めた主人公達が、実際にその学校へ行って調査するシーンがありますが、そこにさりげなく挿入される「それ」の姿は、ぼんやり鑑賞している人が気づかずに見過ごしてしまうレベル。というのは、「それ」が完全に遠景に溶け込んでいるからでして。言うなれば、モキュメンタリーほど極端ではないものの適度な「ナマ」っぽさがあって、それがこの作品の大きな持ち味の一つになっているのではないでしょうか。
 もっとも、だからこそ山場のアクションが『透明人間』になってしまっているのが、いささか腰砕けではあるのですが……。

 一方、腰砕けというよりは拍子抜け……という言い方も適切ではないので、「放り出された感」とでも表現しましょうか。要するにこの作品のラストについて。
 はっきり言えばストーリーは何も解決してなくて、「え、そこで終わるの? 何なの?」と言い返したくなるようなブツ切り感満載の終わり方は、少なくとも「この映画は素直に見るタイプのホラー映画じゃない」ってことなのでしょう。
 化け物の正体は何なのか。主人公は助かるのか、それとも助からないのか……。そういった即物的ともいえる考え方は捨てて、いわゆる「作品が持つメッセージ性」というもののみに焦点を絞って解釈するのが正解なんじゃないかな、と思います。
 (特に怪異の正体当てにこだわるのは、かつての『リング』ブーム以来、日本の多くのホラー鑑賞者に根付いてしまった悪習みたいなもので、「得体の知れない恐怖」を認めず「得体が知れなければ駄作」と批判してしまう人が少なからずいるのは、正直いただけない……と僕などは常々思っているわけですが、まあこれは脱線なので置いておくとして。)
 でまあ、この『イット・フォローズ』が持つメッセージは何か……という部分で僕が考え至ったのは、「ヤリ捨てるな。ヤったらちゃんと付き合え」ってことなんじゃないかな、と。
 ……え、そんな安っぽい話なの? ってことになるんですけど、ぶっちゃけこれが一番妥当な解釈だと思うんですよね。
 元彼は過去に行きずりの女から「それ」をもらって、今度は「それ」をなすりつけるためだけに主人公を騙して交際し、肉体関係を結んだ。要するに、性行為に関して、極めていい加減な性格の持ち主です。一方主人公は悩んだ末に、過去に肉体関係を持った隣家の青年ともう一度寝て、一時的に「それ」から逃れるわけですが、彼女だって過去も今回も、青年と交際する気はなし。「それ」自体も人を殺める際は強姦という形を取ります。また、性行為によって人に移る……という「それ」の特徴は、もちろん性病を連想させるものでもあります。
 そういう、言わば「無責任な性」を象徴する要素が横行する中、ラストは主人公が幼馴染の少年と肉体関係を持った上で、二人で手を繋ぎながら道を歩くところで終わっている。このラストでは同時に背後から「それ」が迫っていますが、二人の手が固く繋がれていることから、主人公が幼馴染の少年に「それ」を押しつけて逃げることはないだろうと想像できます。
 主人公と少年は二人で運命を受け入れ、あるいは運命に立ち向かうのかもしれません。しかしその結果がどうなるかはどうでもよくて、この映画が一番伝えたい大事なことは、「肉体関係を持った男女が、しっかりと手を繋ぎ合うこと」なんじゃないかなーと。
 まあ、そんな風に感じました。真面目に。はい。

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

tag : 映画 モンスター

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