解題「マキゾエホリック」 第十回

 長々と続けてきたこの連載も、第十回をもって一区切りと行きたい。
 
 
 プロットもろくに用意せぬまま、駆け足で書いた「君等の記号/私のジケン」。ゴチャゴチャとドタバタ劇が繰り返される中で、私がストーリーラインの軸に据えたのは、主人公である藍子の人間関係であった。即ち、あくまで当初の案に基づいていたのである。
 転校生である高浪藍子。しかしこの極めて非常識なクラスの中で、彼女は居場所を見出せない。藍子が付き合えるクラスメイトはと言えば、かつて交流のあった「幼馴染」弥生雛世。情報源である「記者」百川優。取り立てて危険性のない「妹」倉時茶凪の三人。さらに、自分と近似する境遇の「記憶喪失の転校生」御伽太郎が加わる。
 一方灘と工藤は、例外的な存在だ。「付き合う」のではなく、あくまで「付いて回ってくる」ものに過ぎない。そして、周囲にゴロゴロといる他のクラスメイト達は――もちろんエキストラである。
 そう、もともとこの作品は、基盤からしてそんな話だった。どんなに個性溢れる者であろうと、主人公に関わる意志がなければ、それはただの端役に過ぎない。そして主人公が平凡な女子高生である以上、非凡な生き方をしている彼らは、「巻き込まれてはならない」厄介な隣人でしかない。
 故に、藍子は一年乙組に溶け込めないし、溶け込もうともしないのだ。それがいかに辛いかを自覚しながら。

 実は受賞後、加筆修正の際に書き加えた部分がある。物語の後半、学校を離れ入院させられそうになる御伽太郎を、藍子が庇うシーンだ。単に「御伽太郎の出番が少なくなるので、この辺りで出してください」という編集指導のもとに加えたのだが、後付けとは言え、かなり重要なシーンになった。
 藍子が御伽太郎を庇う理由。それは、御伽太郎が藍子にとって、数少ない「関われる人間」の一人だからだ。この頼りない記憶喪失者を助けるという行為は、藍子自身の居場所を守ることでもある。「同級生との連帯感」とは藍子の言葉だが、まさに彼女が「関わり」を求めて取った、自発的な行動の一つだった。
 なお、このシーンはミステリー的にも重要な伏線になったのだが……まあ、その辺はお読みになれば分かるだろう。

 そして――こちらは応募原稿の時点からあった部分だ。
 物語のクライマックス。真犯人の登場によって大ピンチを迎えた藍子は、灘の取った「ある解決策」を見て、自分と一年乙組との関係を「知る」ことになる。
 彼女が気づいたのは、自身の居場所だ。それは一年乙組の中に――クラスメイト達の中に、始めからしっかりと存在していた。ただ、藍子の方が拒絶していただけだったのだ。
 かくして藍子は、「一年乙組」という非常識なクラスを受け入れる。自分が腰を据えるべき場所と決め、その結果「転校生」という記号を捨てる――。

 「マキゾエ」の一巻は、要するにそういう話なのだ。あくまで、高浪藍子の物語なのである。


 以上、応募原稿が出来上がるまでの流れを書かせていただいた。実に長い。お付き合いくださった方には、心より感謝したい。
 とは言え、まだ商業に移ってからの話は残っていたりするのだが……しかしこれにて「第一部完」としておこう。
 続きは少し落ち着いてから、ある程度まとまったスパンで書いていきたい。今しばらくお待ちください。
 

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

tag : マキゾエホリック

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