怪物映画レビュー 『クランプス 魔物の儀式』

原題:Krampus
2015年・アメリカ

 幼い少年の家に、クリスマスを祝うために集まった親戚達。だが彼らは決して望まれた存在ではなかった。両親は生き方も価値観も違う彼らとギクシャクするばかりだし、意地悪な従姉達は少年がサンタを信じていることを馬鹿にし、彼が書いたサンタへの手紙をパーティーの席で読み上げて嘲笑う。ついに限界に達した少年はパーティーから逃げ出し、サンタへの手紙をビリビリに引き裂いてしまった。
 もうサンタなんて信じない。クリスマスなんて楽しくない。みんな嫌いだ――。
 だがそんな少年の想いは、町に不気味な魔物を呼び寄せてしまう。突如吹雪に閉ざされた町で、いつの間にか消え去った住民達。孤立した一家の長である老婆は、暖炉の灯を絶やさぬように薪をくべ続ける。しかしその火が消えた時、煙突を伝って「それ」は現れた……。
 クランプス――。頭に角を生やし、フードを目深にかぶり、無数の鎖と巨大な袋を担いだ「陰のサンタ」。彼はクリスマスへの敬虔さを失った者を戒めるため、邪悪な妖精達を引き連れ、少年からあらゆるものを奪っていく。
 一人、また一人と襲われ、食われ、あるいは連れ去られていく家族達。このおぞましいクリスマスの果てに待ち受ける少年の運命は、果たして――。


 どこか懐かしい、80年代のファミリー向けホラー映画を彷彿とさせる作品。と思ったら、実際に制作側もそれを意識していたようです。確かに僕が小学生の頃は、家族みんなで見られる愉快なホラー作品というのが、そこかしこにあった気がします。
 そういう80年代リスペクト精神もあって、ここに登場する魔物のほとんどは、スーツや操演人形を用いた「フィジカルエフェクト」(要するにCGが導入されるよりも前の、昔ながらの特撮)によって撮影されています。僕自身は常々、こういうのは手法よりも出来のよさが大事なのだというスタンスでいますが、この『クランプス』に登場する魔物はどれも出来がよく、本物だからこその生々しさ(と80年代ホラーの懐かしさ)というのがきちんと出ていて、充分に効果があったと思います。
 何より、登場する魔物達が魅力的であるという、何よりも大事なポイントをきちんと押さえてあるのが嬉しい。フードの奥に不気味な老顔を覗かせる、悪魔のようなサンタことクランプス。オルゴールの箱の中に潜んでいる巨大な人食いピエロ、ジャックインザボックス(びっくり箱)。ギョロ目と鋭い牙が妙に愛らしいクマのぬいぐるみ、テディ。怖いの一言に尽きる天使人形、ケルビム。唯一のCGキャラでありながら存在感抜群のジンジャーブレッドマン(クリスマスに食べる人型クッキー)……などなど。
 それから忘れてならないのが、武器を手に群れで襲ってくる奇怪なエルフ達。このエルフというのは、もちろんトールキンが創ったアレじゃなくて、本来の意味である「妖精」のエルフです。妖精というのは、日本では漠然と愛らしいイメージで捉えている人が多いかもしれませんが、我が国に置き換えて喩えれば、れっきとした妖怪、化け物の類。この作品に登場するエルフは、まさに陽気で残忍な化け物といった性格づけがなされていて、妖怪好きである僕の心を、これでもかとくすぐってくれました。

 そういった魔物達がクリスマスミュージックに合わせてはしゃぎ回っているところを見ているだけで充分楽しいのですが、ストーリーの方はなかなか情け容赦ないですね。
 血しぶきこそ出ませんが、せめて赤ん坊ぐらいは助かるだろうと思ったら全然そんなことないし。町の人なんてみんな巻き添えだし。いや、町の人がもはやクリスマスに敬虔な気持ちを抱いてない(つまりクランプスの餌食になる素質がある)のは、冒頭から明らかではありますが……。
 何にせよ、最終的に一切の救いもなく終わる物語は、どんなにファミリー向けであっても、やはりホラーなのだということでしょう。
 ともあれ、クリスマスに見たいとっておきの映画の一つとしてカウントすべき、楽しい作品だと思います。そうですね、これと『グレムリン』と『キラー・スノーマン』の三本立てでいかがでしょうか。え、最後のいらない?

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

tag : 映画 モンスター 妖怪

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