怪物映画レビュー 『パンズ・ラビリンス』

原題:El laberinto del fauno
2006年・メキシコ・スペイン・アメリカ

 スペイン内戦によって父を亡くした少女。妊娠した母の再婚相手は、独裁政権の下に立つ冷徹な大尉であり、新たに生まれてくる男の子にしか興味がない。そんな大尉に呼ばれて母娘が移り住んだのは、森の中に立つ古い製粉所。そこは独裁者に対するレジスタンスとの前線拠点であり、大勢の軍人が集い、血が流されていた。
 辛い現実を生きる少女にとって、ただ一つの心の拠りどころは、お伽噺だった。
 ある夜、少女の前に妖精が現れる。妖精に導かれ少女が向かったのは、古くからある森の迷路。その先にあった地下への階段を降りると、そこにはパンという山羊に似た精霊がいた。パンは少女に、ある事実を語る。

 ――昔、地下の王国の姫が好奇心から地上へと出た。しかし強い光にやられて記憶を失い、地下に戻ることも忘れ、ただの人間として生涯を終えた。地下の王は、そんな姫の魂が再び帰ってこられるように、地下への道を世界のあらゆる場所に用意した。だがその最後の一つが、次の満月の夜に閉ざされようとしている。……その姫の生まれ変わりというのは、紛れもなく少女のことだ。しかし少女が地下に戻るためには、長い年月の中で魂が人間になりきっていないことを示すために、次の満月の夜までに三つの試練を乗り越えなければならない……。

 少女はパンに言われるままに、試練に挑んでいく。朽ちた大木の下に潜む大蛙に魔法の石を食わせ、手の平に目玉のある、子供を食らう恐ろしい怪物の宮殿から、短剣を取ってくる。しかし古い言い伝えを知る家政婦の一人は、少女にこう言っていた。「パンには気をつけなさい」と――。
 試練にのめり込む少女を待つのは、母の死や大尉の怒りという現実だった。さらに試練の途中で禁を犯し、食べてはいけないと言われている異界の料理を口にしてしまったことで、ついにパンからも見放されてしまう。
 一方、大尉が率いる部隊とレジスタンスとの戦いも激化していた。少女は、家政婦の一人がレジスタンスのスパイであることに気づくも黙っているが、それを知った大尉の怒りを買い、軟禁されてしまう。そんな少女の前にパンが現れた。最後のチャンスを与えるために……。


 『ハリー・ポッター』シリーズのヒットからファンタジー映画が定着した時期、ファミリー層など知るかとばかりに、悪夢のようなお伽噺を堂々と描いてしまった挑戦的作品。ジャンル的にはダークファンタジーということになっているようです。
 主人公の少女は辛い現実に生きるあまり、お伽噺の世界に逃げ込みます。このお伽噺が一種の現実逃避であるのは間違いないわけですが、それでも少女にとってただ甘いだけの世界でないのが面白い。
 ナナフシのような虫が変形した妖精や、不気味なパンを始めとする怪物達は、どれも愛らしさからは程遠いグロテスクな存在。また少女は試練の先で、虫や泥にまみれ、目の前で人食い怪物に妖精を貪り食われ、挙句にパンからも見放され……と、これまた夢や希望とは程遠い冒険を繰り広げることになります。
 少女に試練を与えるパンも、どうやら何かを企んでいるようで……と、この辺は真実なのかミスリードなのか、判断は観客一人一人に委ねられるところ。少女が迎えた結末にどの程度救いを求めるのかによって、変わってくると思いました。
 いずれにしてもファンタジー全開ではなく、辛い現実が一貫して描かれているのが、この作品の持ち味。怪物達の登場シーンは決して多くはありませんが、濃厚な現実の中に濃厚な異形が散りばめられ、どちらも非常に重々しく、味わい深く仕上がっています。

 いやぁ、面白かったです。見終わった後、しばらく子守唄を口ずさんでしまいました。

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

tag : モンスター 映画

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