怪物映画レビュー 『ケイヴ・フィアー』

原題:ABOMINABLE
2006年・アメリカ

 ロッククライミング中の事故で妻を亡くし、自身もまた車椅子生活を余儀なくされた主人公。主治医の勧めもあり、彼は半ば強引に友人に連れられて、森の別荘へリハビリに訪れる。
 しかしそこは、問題の事故現場の間近。おかげで気分も優れないまま、買い出しに出かけた友人の帰りを待っていると、ちょうど向かいに建つもう一軒の別荘へ、若い女性グループがやってくるのが見えた。
「騒がしくなりそうだ……」
 そう思ったのも束の間、異変が起きる。別荘の外で携帯電話をかけていた女性が一人、突然現れたビッグフット的なものに連れ去られてしまったのだ。しかし、それを目撃したのは、主人公一人だけだった。
 彼は、何とかこのことを周りに知らせようとする。だが、あいにく車椅子のため、別荘の外には出られない。叫んでも向かいまでは声が届かず、電話線も怪物に切断されて不通。メールで警察に通報すればイタズラ扱いされ、帰ってきた友人に事情を話しても、まったく取り合ってもらえない。
 完全に手段を失った主人公に残されたことと言えば、ただ双眼鏡で窓の外を観察するのみ。だが、やがて怪物が再来し、女性達がその姿を目撃した瞬間から、事態は急変する。
 隣家に乱入し、次々と女性達を食い殺していく怪物。主人公は、生き残った最後の一人を自分の別荘へ招き入れ、協力して怪物の魔手から逃れようと考える。
 そう、ついに彼が怪物と対峙する時が来たのだ。もはやこの惨劇は、隣家だけのものではない――。


 えー、はっきり言ってB級です。
 登場人物は少なく、舞台もほぼ森一辺倒。登場するビッグフットは、特殊メイクとスーツで誤魔化してはいるものの、どう見ても毛むくじゃらのおっさん。加えて、スプラッターあり、ヌードありと、もう心行くまでのB級っぷりです。

 が、しかし。実はシチュエーションホラーとして見ると、結構優秀なのではないかと思うんです。
 身動きが取れない主人公。彼に許されるのは「見る」ことのみ。そして双眼鏡越しの風景の中で、次々と起きていく隣家の惨劇……。
 これだけでも一つのシチュエーションとして完成しているわけですが、さらに深読みを交えて言うなら、この「隣家」というのがまた曲者。隣ですからね。要は対岸の火事です。一応主人公は、自分の身の危険も感じるし、女性達を助けなきゃと奮闘もするわけですが、一方ですべての惨劇が「双眼鏡越しの景色」として処理されているのが面白い。
 言うなればこの主人公は、本来は「当事者」ではないんです。ただの「目撃者」に過ぎない。だからこそ、全容を把握していながら事件に立ち入ることができず、もどかしさが募るわけです。
 そして終盤、彼が生き残った女性を招き入れることにより、「目撃者」から「当事者」に変わると、その瞬間から物語の緊張感は一気に高まっていきます。
 まさに脚本の妙。また、双眼鏡というアイテムを上手に利用した演出も、なかなかのものではないでしょうか。

 ……なんて、どんなに持ち上げたところで、毛むくじゃらのおっさんが美女を噛み千切って血まみれにする映画には違いないんですけどね。
 でも、宝石の原石ぐらいの価値はあると思いますよ。たぶん。

テーマ : B級映画
ジャンル : 映画

tag : モンスター 映画

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