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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第73話『欲望のヤマタノオロチ』 感想

 今回の原作は「やまたのおろち」。鬼太郎シリーズではない読み切り短編作品です。
 これで六期では「霊形手術」「蒸発」「カモイ伝」「足跡の怪」にこの「やまたのおろち」と、計5本のノン鬼太郎シリーズが映像化されたことになります。今後もやっていただけると、一水木ファンとしては嬉しい限りです。

 ちなみに原作版「やまたのおろち」はどんな話かというと――。
 好奇心旺盛な少年が地元の老人の忠告を聞かずに、呼子を探して深山に入り、そこで本当に呼子に遭遇。ダイヤの中の世界に吸い込まれ、そこでやまたのおろちに襲われてしまうというもの。
 少年はダイヤの外にいる呼子に、ここから出してくれと懇願し、「ある条件」をもとにそれを叶えてもらいます。
 その条件とは――今回のアニメ版をご覧になっていれば、きっと想像はつくことでしょう。
 主人公の年齢や性格、そしてオロチの行動などは大きな改変を受けた今回のアニメ版ですが、そのラストは、原作を忠実に踏襲したものになっていた、というわけですね。

 なお「やまたのおろち」が第二期で映像化された際は、主人公の少年の役回りをねずみ男が担当。原作のオチまでをこなした後、鬼太郎を誘い出し、新たな身代わりにしようとする――という展開で、むしろここからが本番といった感じになっていました。
 鬼太郎と猫娘はダイヤの中に閉じ込められ、やまたのおろちと戦うことになります。要は、純粋なバトルエピソードになっていたわけです。
 一方第三期では、原作のオチは使用されず、ダイヤに閉じ込められた少年がオロチの生け贄にされるのを、鬼太郎が助けに行く――という流れでした。
 また、ヤマタノオロチのエピソードは第四期にも存在しますが、こちらは原作要素は一切なく、ぬらりひょんの陰謀によって出現したヤマタノオロチを鬼太郎が倒すというもの。なので、水木短編版の「やまたのおろち」がきちんと映像化されたのは、第三期以来と言っていいかもしれません。

 いずれにしても、原作や過去のアニメ版では、おろちは巨大な怪物以外の何物でもありませんでした。
 一方で今回のアニメ版は、ヤマタノオロチを、意思疎通が可能な(ただし非常に邪悪で狡猾な)超越的存在として描写。この点は画期的だったと思います。
 おそらくは「ダイヤ」という原作要素から、「欲望」「願いを叶える」というキーワードへの連想で、このような形になったのでしょう。
 今回のストーリー自体は、言ってしまえば古典怪奇小説「猿の手」がコンセプトベースになっているため、オロチをストーリーに生かす上で、人間の願いを叶える「神」の如き存在に仕立てる必要があったものと思われます。
 ……なお、オロチの声は柴田秀勝さん。アニメ版鬼太郎では常連ですが、やはり柴田さんと言えば先代ベアード様(三期でも演じていらっしゃいましたが)ですね。今回も実に貫禄たっぷりでした。

 ちなみに、原作・旧作版おろちと今回のオロチの違いとしてもう一つ挙げられるのは、神話上の八岐大蛇との関連性です。
 原作・旧作版では、神話上の八岐大蛇は、実際に存在していたダイヤの中のおろちがモデルになっていたのだ――という真相が、作中で示唆されています。
 一方、今回のヤマタノオロチは、神話上の八岐大蛇とは別物であるかのように語られていました。とは言え、ダイヤのオロチと神話のオロチ、両者の関係性は明確ではなく、実際のところどうなのかは不明のままです。

 ついでに呼子についても触れておきましょう。
 呼子というキャラクターは、そもそも鬼太郎シリーズでは、鬼太郎の仲間の一人です。特に昭和マガジン版後期では、鬼太郎ファミリーの一員という位置づけにまでなっていたのは、間違いありません。
 なお、名前は登場回によって「山びこ」だったり「山こぞう」だったりします。もっとも平成期ぐらいから後は、原作・アニメ版とも「呼子」で統一されることが多くなりました。
 ところが原作「やまたのおろち」では、呼子は少年を陥れるという役回りを演じています。これをアニメ版でそのまま使ってしまうと、「鬼太郎の仲間の呼子」と「やまたのおろちのダイヤを持つ狡猾な呼子」が両立するという矛盾が発生します。
 この矛盾点を解消するために、アニメ版では様々な工夫が為されてきました。

 まず第二期では……特に工夫はありませんでした(笑)。
 続いて、サブキャラクターの設定が厳密になった第三期では、呼子ならぬ「ニセ呼子」というオリジナルキャラクターが登場。これがダイヤを持っているという役回りでした。
 彼によって少年誘拐の濡れ衣を着せられた呼子は、鬼太郎に同行してニセ呼子と対決。さらにニセ呼子が、おろちに捕まって無理やり従わされている存在だと知ると、彼とともに協力して、おろちに立ち向かう鬼太郎をサポートします。
 まさに呼子が主役の貴重なエピソードだった――と言えるでしょう。

 で、今回の第六期ですが――。
 呼子は呼子でも、いわゆる「別個体」というやつでした(笑)。
 偽物ではなく、あくまで呼子は呼子。ただしクセの強いやつだ――というわけですね。
 ゲゲゲの森の呼子の方は、チラリと顔を見せる程度で、大きく話に絡むことはありませんでした。
 この辺は、あくまで原作「やまたのおろち」の結末を重視した結果であると言えそうです。

 ……と、そんな長い薀蓄を経た上での(笑)今回の感想。
 うん、先にも書きましたが、要するに「猿の手」なんですね。
 何でも願いを叶えてくれるアイテムがあって、ただしその方法は極めて悪質である――という。
 もともと原作の「やまたのおろち」はそういうストーリーではありませんでしたが、余談ながら、水木先生の作品には、やはり「猿の手」をベースにしたものがあります。貸本版「墓場鬼太郎」シリーズより、「ないしょの話」がそれですね。
 「ないしょの話」は、後にお馴染み「大海獣」にリライトされるエピソード。その貸本版独自の要素として、目玉親父が「猿の手」の如く、ある老人の願いを叶える(実際は目玉親父は何もしておらず、偶然叶ったようになっていただけ)という展開がありました。
 また「ないしょの話」以外にも、こちらははっきりと「猿の手」を原作とした、「魔石」という短編も存在しています。

 で、この猿の手の役目をヤマタノオロチのダイヤに担わせた――というのが、今回のアニメ版です。
 猿の手が叶えてくれる願いは三つだけでしたが、オロチは首の数、即ち八つまで叶えることが可能。ただしそのたびに、ダイヤの持ち主は不幸になっていくというおまけつき。しかもオロチに意思があって、いちいち願いを催促してくるので、実に厄介です。
 主人公を少年からサラリーマンへと変え、彼の身勝手な願いが次々と不幸をもたらし、原作同様の怪奇な結末へと向かう――。その過程こそが、鬼太郎がどう話に絡んでくるかも含めて、今回の大きな見所だったと言えるでしょう。

 サラリーマン斉藤の六つ目の願い、「オロチを殺せるやつを連れてくる」によって鬼太郎が堂々と登場するシーンのカッコよさ。しかし斉藤は、よりによって七つ目の願いでその鬼太郎を抹殺してしまい、追い詰められてついに最後の願いに辿り着きます。
 結局すべては呼子の策略だった――というのは原作どおり。まあ、この結末に行き着くのに、だいぶ回りくどい気はしましたが(笑)、要は八つも願いを叶えてもらえる(そして不幸に見舞われる)機会があれば、いずれここに辿り着くということでしょう。
 「猿の手」自体は、ホラー好きならば慣れた展開ではあるものの、この「猿の手」と「やまたのおろち」のミックスは、なかなか面白かったです。

 ただ、気になったところも一応あって。
 それは何かと言うと、もちろん「鬼太郎の死」ですね。
 死んだはずの鬼太郎が生きていた――というのは、まあ、鬼太郎だからで済むのですが(笑)。
 しかし落雷後に鬼太郎がチャンチャンコを残して消滅し、斉藤がオロチに「騙したな!」と叫んだのは、ちょっとよく分かりませんでした。
 いや、オロチが893の幻を斉藤に見せていた件で「騙したな!」だけなら分かるんです。でも、鬼太郎はそこにどう絡むのか。
 一つ解釈するとすれば、あの鬼太郎自体が、893と同様にただの幻だった――という線ですが。
 しかし、チャンチャンコがしっかり残ったこと。さらにラストでの鬼太郎親子の会話から察するに、完全に幻だったというわけではなさそうです。むしろ、「鬼太郎の死」がピンポイントで幻だった――ということになるのでしょうか。
 この辺は、ちょっと詳細が不明瞭だったため、気になりました。
 ……あと気になったと言えば、自爆して復活できるダイヤが、なぜ指鉄砲には殺られるのか(笑)。まあ、これもオロチの「騙し」だったってことかしら。
 ついでに言うと、小型飛行機のビル激突が、ちょっとあっさり描写されすぎてて分かりにくかったです。

 とまあ、そんなツッコミはあったものの、面白いエピソードでした。
 むしろ「猿の手」展開にハズレなし、と言ったところでしょうか。


 さて次回は――いよいよ玉藻前登場!
 四将編は半年で切り上げるのか、まだまだ先が続くのか。
 いや、そもそも四将を逃亡させた黒幕がいるはずなので、もう一仕掛けあっておかしくないのですが、果たして。
 ともあれ、楽しみにしています。ではまた!

テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
ジャンル : アニメ・コミック

tag : ゲゲゲの鬼太郎 水木しげる 妖怪 アニメ

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