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ゲゲゲの鬼太郎第6期・第76話『ぬらりひょんの野望』 感想

 ついに始まりました。ぬらりひょん編。
 これが最終章になる――という憂いはあるものの、まずは新たな展開を歓迎したいと思います。

 さて、ぬらりひょんと言えば、歴代アニメ版鬼太郎において、悪妖怪の親玉として名を馳せてきました。
 今期もその伝統に則り、ついに最終章で姿を現したわけですが――。
 ここでまずは、歴代のぬらりひょんを振り返ってみましょう。

 始めは原作から。まず少年マガジン版にて「妖怪ぬらりひょん」というエピソードで、蛇骨婆とともに登場します。
 人間社会に紛れて暮らしながら、爆発事件などの悪事を起こして楽しんでいた、悪質な妖怪でした。しかしここではあくまで一話きりのゲストキャラであり、それ以上でも以下でもありません。
 続いては、異色作「野球狂の巻」。ここでぬらりひょんは、妖怪達が集う墓の下高校の校長という役回りで登場します。
 人間社会を乗っ取るという悪事を密かに目論んでいたため、一応はボスキャラと言えるのかもしれません。……作品自体はコメディでしたけどね。
 続いて――正史ではありませんが、コミックボンボンで連載された、水木プロ版ゲゲゲの鬼太郎。いわゆる「最新版ゲゲゲの鬼太郎」にもぬらりひょんが登場します。こちらはアニメ第三期との連動企画ということもあり、ぬらりひょんは押しも押されもせぬ大ボスという扱いでした。
 そして再び正史に戻り、「国盗り物語」シリーズ。ここでのぬらりひょんは、アニメ版を意識してか、日本妖怪の親玉という役回りで登場し、鬼太郎と共闘しました。また同シリーズ内では、ついに朱の盆も(ぬらりひょんとはまったく関係ない役回りで)原作への登場を果たしています。

 で、続いてアニメ版ですね。
 まずは第一期。原作エピソード「妖怪ぬらりひょん」の映像化に伴い、蛇骨婆ともども登場しました。
 もっとも当時は内容が原作準拠ということもあり、ぬらりひょんはあくまで一話きりのゲスト扱い。悪の親玉として君臨することはありませんでした。
 また、子分の朱の盆も原作には登場しないため、第一期では存在しません。

 続いて第三期……と行きたいところですが、実はその前に重要な映像作品があります。
 それは何かと言うと、月曜ドラマランドの実写版ゲゲゲの鬼太郎ですね。ぬらりひょんが悪の親玉として鬼太郎作品に登場したのは、これが初となります。
 さらに後続のオリジナルビデオ作品「妖怪奇伝ゲゲゲの鬼太郎 魔笛エロイムエッサイム」は、第三期放映中の販売ということもあり、ぬらりひょんと同時に朱の盆も登場しました。
 ちなみに蛇骨婆は一切登場しませんでした。

 で、第三期。アニメ版でついにぬらりひょんがボスの座を得たのが、このシーズンです。
 子分は朱の盆。こちらは前述のとおり原作には未登場のキャラだったため、妖怪図鑑からの起用と思われます。
 一方原作で登場していた蛇骨婆は、ぬらりひょんが初登場した第四話で共演して以降、地獄編まで出番なし。その地獄編でも、どちらかと言えば第四話とは関係ないパラレル的な存在として描写されていたため、ぬらりひょんとの共演は最初の一度きりで終わったと言っていいでしょう(厳密には劇場版にも登場していますが、そちらは原作「朧車」に準拠した起用であり、「妖怪ぬらりひょん」に登場した蛇骨婆とは別物でした)。
 ……ともあれこの第三期で、ぬらりひょんは鬼太郎の宿敵、悪妖怪の総大将として大きく認知されました。
 一方で強烈な印象を残したのが、やはり朱の盆でしょう。当初はぬらりひょんの子分という立ち位置でしかなかった彼が、最終的に選んだその結末は、最終回を見た視聴者の心に深く刻まれたものと思います。

 で、続いて第四期。ぬらりひょんは再び朱の盆を引き連れて、鬼太郎の宿敵として姿を現しました。
 もっとも第三期に比べると、「総大将」という要素はほぼありません。あくまで、時々事件に絡んでくる悪党止まりですね。
 そのぬらりひょんですが、実はその結末と呼べるエピソードが三つ存在します。一つ目は「妖怪ぬらりひょん」を原作とした「ぬらりひょんと蛇骨婆」。ここでぬらりひょんは朱の盆ともども、鬼太郎によって地の底に封印されてしまいます(個人的には第四期屈指のお気に入りエピソードなので、ぬらりひょんはこれ以上出なくてもよかった……と思っています)。しかしその後、シレッと復活しました(笑)。
 二つ目は、「妖怪王ぬらりひょん」編。西洋妖怪すら配下に置き、文字どおり大ボスとして生まれ変わったぬらりひょんは、鬼太郎達と死闘を繰り広げ、ついにとどめを刺されました。製作スタッフによれば、これがぬらりひょんの最期になるはずだったのですが……後のエピソードで脚本を執筆することになった京極さんが、ぬらりひょん死亡の件を知らされずに彼を作中に登場させたため、またまた復活してしまうことに。
 で、その行く末が三つ目の結末。「鬼太郎対3匹の刺客!」です。紆余曲折の末、誰からも相手にされなくなったぬらりひょんと朱の盆は、相変わらず鬼太郎を狙っては、間抜けな敗北を味わうのでした――という終わり方。ある意味第四期らしい、牧歌的な(?)決着になったなぁ、と思います。
 ちなみに四期の朱の盆は、三期と違ってどこまでも従順で、どこまでも間抜け。なかなか愛すべきキャラでした。

 お次は第五期。ここで登場したぬらりひょんは、キャストに第三期と同じ青野武さんを起用し、再び日本悪党妖怪のボスとして君臨することになりました。
 子分は朱の盆に加えて、蛇骨婆がついにレギュラー化。さらに旧鼠、蟹坊主、かまいたち――。果ては妖怪城すら支配下に置き、着々と力を蓄えていきます。
 バックベアード率いる西洋妖怪軍団や、チー率いる中国妖怪ともライバル関係を築くなど、なかなかワクワクする展開でした……が、あいにくシリーズそのものが打ち切られてしまったため、その結末を見届けることは叶いませんでした。

 また、この第五期と並行して封切りされた実写映画版。その第二作目「千年呪い歌」で、ぬらりひょんは事件の黒幕として、蛇骨婆ともども登場しました。
 演じられたのは緒形拳さんでした。

 この他、ゲームなどでもぬらりひょんがボスキャラとして登場したケースはありますが、割愛。
 ちなみに、どうしてぬらりひょんが様々な作品で妖怪のボスとして扱われているのかというと、水木先生の妖怪図鑑の解説文に、「妖怪の総大将」と書かれているからなんですね。ただしこの解説は、藤澤衛彦の『妖怪画談全集・日本編 上』においてぬらりひょんのページに添えられた「物怪の親玉」という一節が元ネタになっています。
 で、その藤澤氏の文章が、おそらく鳥山石燕の絵から連想したイメージのみで書かれているため、実際には「ぬらりひょんが妖怪の親玉である」という伝承は存在しないだろう――というのが定説です。
 そもそもぬらりひょんがどんな妖怪なのかというのは、はっきりしません。江戸時代の妖怪画で頻繁に見られるものの、ほぼそれだけ。「人の家に上がり込む」という特徴も、上記の『妖怪画談全集』を参考にした水木先生の本を経て広まった後付けのものですし、結局のところぬらりひょんの実態というのは謎に包まれたままだったりします(ただし同名の海坊主の伝承が西日本にあります。よく知られた後頭部のでかい老爺姿のぬらりひょんとの関係は不明ですが)。

 とまあ、そんなぬらりひょんの長い薀蓄を経た上で――。


 今回の第六期版ぬらりひょん。政治家に干渉して土転びの森を開発させ、人間と妖怪との間に軋轢を生む。さらにその開発を自ら中止させることで、土転びを味方につける――という、知略に長けたうごめき方を披露しました。
 原作同様の爆発ネタも入れつつ、この黒幕感が嬉しいですね。
 ちなみにその目的は、妖怪の復権。おそらく今後ぬらりひょんは、妖怪と人間との間に争いを次々と生み、その中で妖怪達を味方につけ、勢力を拡大していくのでは――と推察できます。
 第六期のテーマが「異なる者同士の相互理解」であり、これまでまな、名無し、アニエス、石動といった面々を通してそれが描かれてきたところから察するに、ぬらりひょんはこの相互理解を脅かす存在として、最終章に暗躍するのでしょう。
 なおキャラクターデザインについては、妖怪画のバージョンにかなり寄せてきていますね。おかげで見た目がくどい(笑)。まあそれはともかく。

 一方朱の盆については、今のところ、ぬらりひょんの子分といういつもどおりのポジションですね。
 ただ、公式サイトによれば戦闘能力は高いとのこと。もしも今までにない武闘派の朱の盆になったら、それはそれで面白いかもしれません。今後に期待したいところです。

 ……と、ずっとぬらりひょんについて語ってきましたが、一応今回の原作は「妖怪ぬらりひょん」ではなく「土転び」。
 なので、そちらの方にもきちんと触れておきましょう。

 「土転び」は、80年代マガジン版のエピソード。過去に何度もアニメ化された60年代マガジン版「土ころび」とはまったく別の作品です。したがって「石妖」や「麻桶毛」同様、映像化は今回が初となります。
 そもそも土転びのデザインが、60年代版とは違いますからね。ゾウの鼻みたいなのは付いていません。
 で、そんな80年代版の土転びは、人間の森林開発に怒って暴れ、鬼太郎にこらしめられ和解するという役回りでした。今回のアニメ版でもその部分は踏襲され、戦闘シーンなども概ね原作をなぞる形で展開。もっともそこにぬらりひょんが介入したため、ストーリーの結末は大きく変わることになりました。
 もしかしたら今後、土転びがぬらりひょんの仲間として再登場することもあるかもしれませんね。

 そしてラストは、鬼太郎とぬらりひょんの、わずかな邂逅――。これからの戦いを予感させる幕引きとなりました。
 果たしてこれからどうなっていくのか。名無し編以来の不穏さが漂っていますが、最後まで見守りたいと思います。


 さて次回は、「猫仙人」!
 原作初期の定番エピソードは、やはり楽しみです。そういえば「夜叉」とかまだやってないんだよなぁ。
 ではまた!

テーマ : ゲゲゲの鬼太郎
ジャンル : アニメ・コミック

tag : ゲゲゲの鬼太郎 水木しげる 妖怪 アニメ

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